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『象は静かに座っている』“声無き悲鳴”を映し出す、孤高の234分

(c)Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen

『象は静かに座っている』“声無き悲鳴”を映し出す、孤高の234分

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ラストシーンに浮かび上がる純粋さと未熟さ



 しかし、ここで示される一縷の希望を、われわれは素直に受け取ることができるだろうか。彼らが具体的な出来事によって陥る絶望に比べ、示される希望はあまりにも無根拠でかたちがないと感じるのである。


 フェデリコ・フェリーニ監督の『カビリアの夜』(57)は、信じる者に裏切られ続けた女性が、人々の楽観や善意という、ささやかながらも普遍的な人間の力によって救われる。また、『大人は判ってくれない』のドワネル少年は、彼にとっての世界の果てである浜辺で引き返し、現実と向き合わざるを得なくなる。このような、絶望のなかにある人々を描いた名作のラストと比べると、本作のそれは、あまりにも弱く頼りないのだ。



『象は静かに座っている』(c)Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen


 死の影を背負ってしまう本作に対して、筆者はどうしても監督の純粋さとともにある“未熟さ”を感じざるを得ない。一つの作品にこだわったからこそ、本作には異様な熱が帯びていることは確かだ。しかし、大きな伸びしろのある新人監督がキャリアを終えてしまうのには、あまりにも惜しいと感じる、不完全に思える作品である。




文: 小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter: @kmovie



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作品情報を見る



『象は静かに座っている』

2019年11月2日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!

配給:ビターズ・エンド

(c)Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen


公式サイト:bitters.co.jp/elephant

Twitter:@HUBOandELEPHANT

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※2019年11月記事掲載時の情報です。

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