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『ムーンライト』「A24」に「プランB」インディペンデント系製作会社が守り抜く、挑戦的なオリジナル企画と作家性

(C)2016 A24 Distribution, LLC

『ムーンライト』「A24」に「プランB」インディペンデント系製作会社が守り抜く、挑戦的なオリジナル企画と作家性

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クラシカルとモダンの融合、演出の挑戦



 少ない登場人物たちは多くを語らず、置かれた境遇で黙々と生きている。台詞が少ない分、代わりに雄弁に物語っていく役割を、画と音が担っていく。監督がもっともこだわったのは黒人のスキントーン。そこが美しくなければ本作のアイデンティティ自体が揺らいでしまう。監督曰く、そもそもフィルムは白人のために発明されたものだから、黒人の肌には向いていないとのこと。故に、デジタルカメラを使い、狙い通り徹底的に撮影環境をコントロールしていった。



『ムーンライト』(C)2016 A24 Distribution, LLC


 人肌は環境色の影響を受けるのでロケ地の美術要素に気を向け、編集時に微細な色調整を施した。成長に合わせて微妙に変わる色調。主人公の行動に寄り添うかのようについていくカメラワーク。ファッションフォトのように現実と切り離されたポートレートショット。ヒップホップをスローにさせたチョップ・アンド・スクリュードという手法とクラシック音楽をリミックスさせる試み。等々、主人公の心理状態に合わせて従来の技法と新しい技術を融合し、力強さと繊細さが同居する独特の世界を、デジタルワークを駆使して的確に表現している。


『ムーンライト』予告


 また、本作の冒頭に流れてくるBoris Gardiner「Every Nigger is a Star」は、ヒップホップ界の鬼才KendrickLamarの傑作アルバム「To Pimp A Butterfly」(15)の一曲目でサンプリングされた元曲である。「Every Nigger is a Star」という意味深なタイトルもさることながら、同アルバムは<黒人のアイデンティティ>という表向きのテーマと、裏のテーマである<セクシュアリティ>を追求する内容である。映画全体を通して画音の少ないミニマムな構成だからこそ、一つ一つのディティールに感覚が行き届き、解釈ができる余地が残されている。



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