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『マリッジ・ストーリー』愛は変わらず、夫婦は終わる――揺れる“心”を綴った悲喜劇

『マリッジ・ストーリー』愛は変わらず、夫婦は終わる――揺れる“心”を綴った悲喜劇

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『マリッジ・ストーリー』あらすじ

うまく行かずにすれ違うチャーリーとニコ―ル。2人は円満な協議離婚を望んでいたが、これまで閉じ込めてきた互いに対する積年の憤りが露わになって衝突、離婚弁護士を雇って争うことに。決別するのか、それとも新しい関係を模索するのか、大きな選択を迫られる。果たして2人が選ぶ結論とは。



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この悲喜劇は、私たちの日常そのもの



 離れていく心、壊れゆく絆。愛し合っていた夫婦の終焉。


 きっとこれは、ストレートなラブストーリーではない。ただ、ここまで真摯に、繊細かつ平等に夫婦の姿を見つめた映画は、他に見当たらない。


 疑いようのない、愛の傑作だ。


 アカデミー賞の脚本賞候補にもなった『イカとクジラ』(05)のノア・バームバック監督が手掛けた『マリッジ・ストーリー』(19)は、離婚を決意した夫婦の歩みと心象を、切なくも温かくつづった一作。


 『パターソン』(16)から『スター・ウォーズ』シリーズまで幅広く活躍するアダム・ドライバーと、『アベンジャーズ』シリーズから『ロスト・イン・トランスレーション』(03)までこれまたどんな作品でも存在感を発揮してきたスカーレット・ヨハンソンが主演。エンタメ大作/アート映画の両方で評価されてきた2人の神髄が詰まった作品に仕上がっている。


『マリッジ・ストーリー』予告


 劇団を率いる演出家の夫チャーリー(ドライバー)と俳優の妻ニコール(ヨハンソン)は、ニューヨークで息子と暮らす3人家族。夫に愛情を抱きつつも、すれ違いが重なり、「自分の人生を生きたい」と思うようになったニコールは、チャーリーとの離婚を決意する。話し合いの結果、2人は弁護士を立てず、円満な協議離婚を行おうとしたが、お互いへの不満や行き場のない感情が妨げとなり、ついには弁護士を立てた裁判に発展してしまう……。


 バームバック監督の特徴は、『フランシス・ハ』(12)でも『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(14)でも、『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(17)でも、悲喜劇を描いてきたことだろう。孤独や家族、愛といったテーマを、「悲喜」をない交ぜにして探求する人間味豊かな作家性。だからこそ彼の作品には「共感性」と「味わい深さ」が宿り、アカデミー賞のほかカンヌ国際映画祭やニューヨーク映画祭などで高評価を得てきた。



『マリッジ・ストーリー』


 切ないのに温かい。甘くも苦い。彼の作品の“風味”は、雨の日もあれば晴れの日もある私たちの日常そのものだ。バームバック監督の最高傑作との呼び声も高い『マリッジ・ストーリー』は、ヴェネツィア国際映画祭、トロント国際映画祭、ゴッサム・アワード、インディペンデント・スピリット賞などで好評を博し、第92回アカデミー賞では6部門にノミネートされ、ローラ・ダーンが助演女優賞を受賞した。アメリカ最大の映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、96%の高得点を獲得している(2019年公開当時)。



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