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『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のヒットは必然?トレンド×普遍性を両立させた周到なアイデア作

(c)2017 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のヒットは必然?トレンド×普遍性を両立させた周到なアイデア作

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SNS世代のハートに訴えかける秀逸なマーケティング



 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は何故ヒットしたのか? 答えは簡単。予想以上にしっかり「面白い」からだ。しかし、面白いのにヒットしない映画というのは世の中にごまんと存在する。


 この作品の面白さは、より適切な表現をするなら「ウケた」といえるだろう。気軽に観られて、笑えて、斬新でもある。この辺りの参加のしやすさが、世界的に広まった理由の1つと考えられる。普段映画を観ない層にも「面白そう。観たい」と感じさせる、とっつきやすさとハードルの低さ。本作は、ストロングポイントの打ち出し方が抜群に上手く、マーケティング的にハマったモデルロール的映画ともいえる。


 つまりこの映画は、設定の面白さが時代に即しているものだったということ。それは何かというと、「若者たちがゲームの世界に入り込んで、アバターとして過ごす」だ。「見た目はマッチョな無頼漢だが、中身は気弱なオタク」をロック様が演じ、「見た目はおデブな中年男だが、中身は自撮り大好きな女子高生」をジャック・ブラックが演じるという斬新性とギャップ。設定を聞いただけで笑えてしまいそうな、わかりやすさが大きい。



『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(c)2017 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.


 2016年に『君の名は。』がヒットしたことも関連づけられるかもしれないが、「入れ替わる系」映画というのは想像の余地を広げやすく、笑いの準備がしやすい。本作はそこに「キャラのシャッフル」という新要素を取り入れ、「アバターだからリアルとのギャップは当然」ながら、「それを大真面目に実写でやる」という“ツッコミ待ち”のような状況を作り出している。端的に言えば「何やってるの(笑)」と観る者が思いやすいということだ。


 正直に言って、まるでコント。しかしそれをビッグバジェットで大枚をはたいて映画化。当然ながら予告時点で大いに笑え、自然と中身を観たくなる。制作発表の時点ではネガティブだった人々の反応も、予告編を観れば『ジュマンジ』とはまるで別物とわかり、「独立した映画」として興味をそそられ、また『ジュマンジ』というコンテンツとどう差異を付けるのか、妄想を巡らせていくように変わったのではないか。そう考えると、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は劇場に足を運ぶ前に、すでに観客に歓迎されていたのだ。


 また、本作が老獪なのは、SNS世代に強く訴えかけたことだ。現代において、我々はSNS上で1人が数多くのペルソナを使い分けるのが「普通」。異性のふりをしたり、或いはキャラ付けを自由に行ったり、というのは特異なことですらない。アバターで芸能活動をしている一般人も多く、本名も素顔も全く開示せずに、外界との接点をアバターとしてしか持たないことも大いにありうる。



『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(c)2017 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.


 そんな時代において、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』の「劇中のほとんどがアバター状態」は、映画ではこれまでになく斬新だが、感覚としては一般的だったのだ。この絶妙なストライクゾーンを、『ジュマンジ』を知らないアンダー30代に対しては設定の面白さで売り、『ジュマンジ』を知るオーバー30代には著名コンテンツを使った「こう来たか」なアイデア性で訴え、「両取り」出来たことが本作の躍進のカギといえるのではないだろうか。


 翌年には『レディ・プレイヤー1』(18)が公開され、その傾向はますます加速する。ただ、本作はアバターを生身の人間が演じるというアナログな手法をとっており、それが先に挙げた「コント感」を生み出し、CGキャラクターに感情移入しづらい人々にも広く受け入れられたといえる。こうやって見ていくと、隙だらけでとっつきやすいのはあくまで「仕込み」で、中身は熟考に熟考を重ねた映画だということが見えてくるだろう。



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