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『クローバーフィールド』稀代のヒットメーカー J・J・エイブラムスがつくる、9.11後のパニック映画とは

(c)Photofest / Getty Images

『クローバーフィールド』稀代のヒットメーカー J・J・エイブラムスがつくる、9.11後のパニック映画とは

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モンスター以外のシーンこそが見どころ



 YouTubeにアップされている、9.11当日の膨大なフッテージ。いつでもどこでもあの凄惨な事件を見ることができる、しかしどうしても現在では映像では伝えられないものがある。それは、全世界の人々が事件当日に感じていた感覚、「何が一体どうなっているのだ?」という、全体像がいつまでたっても見えないことからくる恐怖、不安感だ。


 日常風景を一瞬で脅かす、力のスケールが大きすぎて呆然としてしまう感覚。破壊に直面したあと、受け止められず呆然としてしまう感覚が、この映画にはある。アメリカ人の多くが感じたことのある「把握できない恐怖感」を呼び覚まし、じわじわと精神に響いてくる感覚だ。



『クローバーフィールド』  (C) 2008 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.  


 実際、鑑賞後の観客の反応も、モンスターパニックものは苦手だけど、モンスターが出てこないシーンは興味深かった、という人は多かったようだ。


 モンスターが見えない状況で、目の前で爆音とともに繰り広げられる戦闘や、人通りの絶えた道路をゆく誰も乗っていない馬車、崩壊した摩天楼の遠景、粉塵、舞い散る書類、響き渡るサイレン、など、もう今までのニューヨークはなくなり、復興など生易しいレベルではない絶望感や寂しさの演出が、非常に秀でているのだ。(映画の冒頭には、「これはかつてセントラルパークというものがあった場所で見つかった映像である」とテロップが流れる。)


 ハリウッド映画ではなかなか描くことのない、大きな災害での市井の人々の無力感や置いてきぼり感を描いている。この感覚は、震災の多い日本人こそ共感できる部分だったのでないかと思う。日本の怪獣映画でも描いてこなかった、逃げ惑う普通の人々の日常。日本でのヒットも、そのような一面があったからではないだろうか。


 巧みな宣伝と描写力によって、モンスター好きだけを相手にせず、幅広い客層に受け入れられるようにヒットさせるチューニング力こそ、J・J・エイブラムスのプロデューサーとしての手腕である。



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