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『アメリカン・ギャングスター』アンチヒーローになれなかったアメリカのギャングスターを描くクライムドラマ

(c)Photofest / Getty Images

『アメリカン・ギャングスター』アンチヒーローになれなかったアメリカのギャングスターを描くクライムドラマ

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アイコンにはなれなかった男



 フランク・ルーカスに対して、この物語の良心とも言えるリッチー・ロバーツも比重を置いて描かれている。だからこそ、リドリー・スコットは信頼のおけるラッセル・クロウをこの重要な役にキャスティングしたのである。リッチー・ロバーツは警察内でも蔓延っていた汚職にも屈しないヒーローだ。そんなヒーローがアメリカのギャングスターであるフランク・ルーカスを追いつめていくことが本作の肝であり、ラッセル・クロウとデンゼル・ワシントンの演技合戦が見どころだ。



『アメリカン・ギャングスター』(C) 2007 Universal Studios. All Rights Reserved.


 だがこの作品を見ると、デンゼル・ワシントンが演じたフランク・ルーカスも魅力的に見せようとしている。切れ者で、頭の回転も早く、仕事が出来る男という感じだ。例えば、本作の原作『The Return of Superfly』のタイトルにも使われた映画『スーパーフライ』(72)の主人公プリースト(ロン・オニール)や、『ニュー・ジャック・シティ』のニーノ・ブラウン(ウェズリー・スナイプス)、『スカーフェイス』(83)のトニー・モンタナ(アル・パチーノ)のようなアンチヒーロー的魅力を引き出そうとしている。


 プリーストは最後に汚職刑事に平手打ちを食わし、自ら麻薬密売から足を洗った。ニーノ・ブラウンは最後、無残に殺された。トニー・モンタナは、溺愛していた人を殺され、そして自らも無残に散る。この3つの作品には、それぞれ違った形ではあったが道徳があった。だから3人のキャラクターは、今でもアイコン(偶像)として愛されている。


『スカーフェイス』予告


 しかし、本作にはそういう部分がなかったように思える。唯一描かれたのがフランク・ルーカスの母(ルビー・ディー)の平手打ちとリッチー・ロバーツの執念が報われたシーンだけだ。


 才気煥発なリドリー・スコットの物語を上手く転がした演出と、デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウといった技術のある役者たちのお陰で、ギャングの与太話が名作になるあと一歩手前まで近づいた。アカデミー賞受賞の熟達な脚本家ですら、さすがにフランク・ルーカスの性悪な結末を書き換えることは出来なかった。フランク・ルーカスは実在の人物だったからこそ、プリーストやニノ・ブラウン、トニー・モンタナのようなアイコンにはなり切れなかったのだ。



文:杏レラト<あんずれらと>

雑誌「映画秘宝」(洋泉社)を中心に執筆。著書『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)が発売中。



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作品情報を見る





『アメリカン・ギャングスター』

Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

(C) 2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

※ 2019年12月の情報です。


(c)Photofest / Getty Images

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