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『トラフィック』名撮影監督ピーター・アンドリュースの正体とは!

(c)Photofest / Getty Images

『トラフィック』名撮影監督ピーター・アンドリュースの正体とは!

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『マジック・マイクXXL』ではソダーバーグが撮影監督に降格?



 そんなソダーバーグが、なんと他人の監督作で撮影監督とカメラオペレーターを務めたことがある。しかも駆けだしの無名時代ではなく2015年というつい最近のこと。ソダーバーグが監督した(もちろん撮影も)『 マジック・マイク』(2012)の続編、『 マジック・マイクXXL』でのことだ。 


 『マジック・マイク』は映画スターのチャニング・テイタムが無名時代に男性ストリッパーとして働いていた実体験に着想を得て生まれた、男性ストリップの世界に生きる男たちの姿を描いた青春映画だ。主演とプロデュースをチャニング・テイタム本人が務め、テイタムからアイデアを聞いたソダーバーグが興味を示して実現した作品だ。 


 ところが続編『マジック・マイクXXL』の前に、ソダーバーグは映画監督業からの引退を宣言してしまう。『マジック・マイクXXL』の監督として発表されたのは、『マジック・マイク』でチーフ助監督と共同プロデューサーを務めていたグレゴリー・ジェイコブズだった。 


 ジェイコブズという人は、インディーズ映画の助監督としてキャリアをスタートさせ、ソダーバーグとは1993年の『 わが街、セントルイス』で組んで以来の仲。ソダーバーグ作品の大半で助監督やプロデューサーを手掛ける右腕的な存在だ。ソダーバーグが映画から身を引いた以上、『マジック・マイクXXL』の監督就任は順当な昇格だったろう。 


 ところが、である。『マジック・マイクXXL』のスタッフリストが公表されて多くの映画ファンが驚いた。撮影監督になんとピーター・アンドリュース(ソダーバーグ)の名前がクレジットされていたからだ! 


『マジック・マイク』予告


 撮影監督とは、撮影現場では監督の次に、時によっては監督以上に重要な役割を果たす役目である。しかもピーター・アンドリュース(ソダーバーグ)は自らカメラを担ぐオペレーター兼任スタイルが信条だ。要するに『マジック・マイクXXL』の現場では、前作では監督だったソダーバーグがカメラを担いで働いていたのだ。ソダーバーグほど著名な映画監督が、自分の助監督だった男の作品で、誰よりも走り回っていたことになる。 


 さらに言えば、ソダーバーグは製作総指揮も務め、メアリー・アン・バーナード名義で編集まで手掛けた。いくら弟分であるジェイコブズと仲が良くても、ちょっと働き過ぎではないですか? そもそも前任の監督が撮影と編集って、新監督のジェイコブズがやりにくくはないですかね? 


 ところが、『マジック・マイクXXL』は前作とは完全にテイストが異なるロードムービー仕立てとなり、ビジュアル面は共通しているものの、ストリッパーのオッサンたちの遠足のような珍道中を描いた、オモシロ切ないコメディに様変わりしていた。最も大きな変化は、ソダーバーグの持ち味である怜悧さが影を潜め、ハートフルで温かいムードに包まれていたことだろう。 


 チャニング・テイタムは「監督が変わったから雰囲気も違う」と発言していたように、確かに『マジック・マイクXXL』はグレゴリー・ジェイコブズの映画であり、ソダーバーグはあくまでも撮影監督ピーター・アンドリュースとして参加していたのだと言える。シリーズ物は過去作の何を継承してどんな新機軸を取り入れるのかが知恵のひねりどころだが、監督が交代して、前作の監督が撮影監督として続投したケースは空前絶後だろう。 



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