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『真夜中のカーボーイ』成人指定でもアカデミー賞を獲得した、底辺で生きる若者たちの物語

(c)Photofest / Getty Images

『真夜中のカーボーイ』成人指定でもアカデミー賞を獲得した、底辺で生きる若者たちの物語

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ニルソンが歌う永遠のテーマ曲「うわさの男」



 この映画の大きな魅力のひとつになっているのが、ニルソンが歌うテーマ曲「うわさの男」である。日本ではビールなどのコマーシャルでも使われ、誰もが一度は耳にしたことのある曲だろう。


 ただ、最初テーマソングを担当予定だったのは、ニルソンではなく、ボブ・ディランだった。原作を読み、仕事を引き受けたが、しめきりまでに曲が仕上がってこない。そこで製作者たちはザ・ビートルズのパブリシストだったデレク・テイラーに相談した。彼はニルソンやランディ・ニューマンなどの曲を推薦。ニューヨークのブルックリン出身のニルソンは粋な雰囲気を持つシンガー・ソングライターで、『うわさの男』は彼が68年に発表したアルバム、「空中バレー」の中に収録されている。彼自身は「アイ・ゲス・ザ・ロード・マスト・ビー・イン・ニューヨークシティ」(孤独のニューヨーク)という曲を使用したかったようだが、シュレシンジャーの希望で『うわさの男』が使われることになった。映画の内容は息苦しく、悲痛なところもあるが、テーマ曲が映画を浄化するような役割を果たしていく。


ニルソン『うわさの男』PV


 ちなみにディランが用意したのは「レイ・レディ・レイ」という曲で、こちらは彼のカントリーのアルバム「ナッシュビル・スカイライン」に収められ、69年にシングル・ヒットした(こちらもいい曲だ)。


 実は「うわさの男」の作者はニルソンではなく、フレッド・ニールというミュージシャン。66年に発表されたニールのアルバムに収録されている(ニルソンのようなさわやかさはなく、もっと武骨で渋いサウンド)。


 ニールはディラン同様、60年代初頭のニューヨークのフォークシーンで活躍していた。マーティン・スコセッシ監督のボブ・ディランをめぐるドキュメンタリー、『ノー・ディレクション・ホーム』(05)には若きディランとニールが一緒に演奏している写真も登場し、「フレッド・ニールと一緒にクラブに出ていた」というディランの証言も聞ける。


『ノー・ディレクション・ホーム』予告


 『うわさの男』以外に劇中ではジョン・バリーが作曲したインスト曲も使われ、都市の悲哀を感じさせるハーモニカの響きが心に染み渡る(ハーモニカ担当はジャズ界の名奏者、トゥーツ・シールマンス)。ハーモニカを使った曲作りが、どこかディラン風になっているところもご愛嬌!



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