1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 地獄の黙示録
  4. 『地獄の黙示録 ファイナル・カット』戦場のカオスを描いた壮大なる叙事詩、新バージョン誕生の背景に迫る
『地獄の黙示録 ファイナル・カット』戦場のカオスを描いた壮大なる叙事詩、新バージョン誕生の背景に迫る

(c)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

『地獄の黙示録 ファイナル・カット』戦場のカオスを描いた壮大なる叙事詩、新バージョン誕生の背景に迫る

PAGES


画質・音質の著しいアップグレード



 逆にショットの前後が『特別完全版』よりも長くなっている箇所もあり、そして音響効果においても、ヘリの急襲でキルゴア中佐(ロバート・デュバル)がワーグナーの「ワルキューレの騎行」を流すさい、オープンリールデッキの起動と同時に音が緩みなく再生される違和感があったが、そのピッチ調整がされていたりと修正が入念にほどこされている。


 さらに今回の『ファイナル・カット』は、画質・音質の向上が著しい。もっとも、これらに対するコッポラの徹底は『特別完全版』のときから考慮され、同バージョンではテクニカラー社にプリント作成を依頼し、プリントが色褪せしにくいダイ・トランスファープロセス(カラー書籍の印刷と同様のリリースプリントを作る非写真プロセス)を実験的に復活させて高画質化がなされた。



『地獄の黙示録』(c)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.


 しかしデジタルを映画制作のベースとする現在、コッポラはさらなるハイクオリティを実現すべく、『地獄の黙示録』のオリジナルネガに初めてアクセスし(これまで同作はオリジナルネガから取得したインターポジをマスター素材として編集がおこなわれてきた)、また映像面ではオリジナルネガをデジタルスキャンし、グレーディングなどを調整。300,173フレームに及ぶフィルムコマのクリーニングに11か月、約2,700時間を費やし、作品をより鮮明な形で復元したのだ。


 また、ドルビービジョンによるハイ・ダイナミック・レンジ(高色域)を実現。これまでよりも最大40倍明るいハイライトと、10倍に及ぶ黒色の締まった暗部表現をもたらしている。そして音響面ではオリジナルサウンドデザイナーのウォルター・マーチが作ったオリジナル6トラックプリントが発見され、これをオブジェクトオーディオ規格のドルビーアトモスに適合させて、没入型のサウンド体験を観客に提供することとなったのである。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 地獄の黙示録
  4. 『地獄の黙示録 ファイナル・カット』戦場のカオスを描いた壮大なる叙事詩、新バージョン誕生の背景に迫る