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『ブレードランナー』はフィルム・ノワールの夢を見るか?

Blade Runner: The Final Cut (c) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『ブレードランナー』はフィルム・ノワールの夢を見るか?

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“フィルム・ノワール”のスター、ロバート・ミッチャム



 1948年、ロバート・ミッチャムは女優2人とマリファナ・パーティを行なっていたところを、踏み込んだ警察に逮捕された。だがこの事件は、1951年になって冤罪であることが判明。映画スターたちの移籍問題を阻止するため、移籍に関わるハリウッド映画人を罠にかけるためのハリウッド関係者による捏造だったのだ。


 この逮捕劇でミッチャムは収監されるのだが、映画会社は刑務所での写真を主演映画の宣伝に利用。“悪い男”のイメージを生み出し、“タフガイ”としてミッチャムを売り出していったのだ。まるで“フィルム・ノワール”そのもののようなエピソードだが、少年時代、犯罪の横行する危険な街で育ったミッチャムが、その環境を抜け出して俳優になったにも関わらず、“悪い男”のイメージでスターになったのは、何とも皮肉な結果だと言える。


 “フィルム・ノワール”の時代から暫く経った1970年代。ロバート・ミッチャムは『さらば愛しき女よ』(75)と『大いなる眠り』(78)で再び私立探偵を演じている。彼が演じたフィリップ・マーロウは、ハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーが生み出したキャラクターで、『三つ数えろ』(46)ではハンフリー・ボガートが演じた当たり役。『三つ数えろ』は“フィルム・ノワール”を代表する作品のひとつだが、ハンフリー・ボガートは“フィルム・ノワール”の起点となる『マルタの鷹』の主演俳優でもある。つまり、ミッチャムは“フィルム・ノワール”の時代を牽引したスターであり、次の時代へと“フィルム・ノワール”を継承させたスターでもあるのだ。


『三つ数えろ(原題:The Big Sleep)』予告


 このような経緯を知った上で、『ブレードランナー』の脚本家であり、製作総指揮としてもクレジットされているハンプトン・ファンチャーが「ロバート・ミッチャムを想定して脚本を書き進めた」と述懐していることを鑑みると、とても合点がいくのだ。なぜなら『ブレードランナー』には“フィルム・ノワール”的な要素を散見できるからである。



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