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家に帰ること『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ  ※ネタバレ注意

(c) 1991 New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

家に帰ること『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ ※ネタバレ注意

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徹底したインディーズ・スタイルと、そこに宿る圧倒的な自由



 ハリウッドの手を借りたとはいえ、ヴァン・サントは前2作と同様に自主製作のスタイルを貫いた。まず、故郷のポートランドで撮影を行なうこと。本作が『マラノーチェ』『ドラッグストア・カウボーイ』と並ぶ“ポートランド三部作”と呼ばれているのは、ファンならご存知のとおり。そして、これは当時のポートランドのストリートの現実を写し出した物語でもある。映画に登場した幾人かは、ストリートで男娼暮らしをしている少年たちで、劇中では彼らにインタビューしたドキュメンタリーのような場面もある。


 ドラマも、これに沿いリアリティを重視して展開。“もし自分が男娼なら、ここでどう生きるか? 何に笑い、何を考え、どう過ごすのか?”――ヴァン・サントはそれを考えてドラマを組み立てた。一方では、役者たちにはアドリブが許され、自分の言葉で語る姿がカメラに収められた。



『マイ・プライベート・アイダホ』(c) 1991 New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.


 低予算を逆手に取り、スタッフは次々と印象深いシーンを作り上げていった。たとえば、店頭に並んだゲイ雑誌のカバーモデルに登場人物たちが配され、語りかけてくる場面。今ならCG合成で楽に作れるシーンだが、当時のCGは予算がかかった。スタッフが思いついたのは、鏡に雑誌のロゴや文字を貼り付け、そこに俳優を写してセリフを語らせるという手法。これは工夫を要するインディーズ映画だからこそできた場面だ。また性描写はヴァン・サントのアイデアにより、静止画を模したショットをつなげるというユニークな表現がなされた。いずれも独創的で、見る者の脳裏にこびりつく。


 映画のテーマは“自由”だが、役者はとにかく伸び伸びと演技をして、スタッフもクリエイティビティをどこまでも伸ばすことができた。「他から隔てられた世界で作った筋金入りのインディーズ映画だ。あれほど自由を感じたことは、これまでの撮影現場では一度もなかった」と、撮影監督のひとり、エリック・A・エドワーズは振り返っている。



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