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『ドラゴン・タトゥーの女』女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話

(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

『ドラゴン・タトゥーの女』女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話

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最もテーマ性が全面的に押し出された映画



 たとえば『セブン』は、猟奇的なサイコ・サスペンスではあるけれども、フィンチャー自身は“人間が自制心を次第に失っていくホラー映画”だと捉えていた。『ゲーム』は人生に絶望していた主人公が、次第に生きる価値を見出していくイニシエーションの物語だし、『ファイト・クラブ』はすっかり去勢されてしまった社会に対して、男性主義的マッチョイズムが牙を剥く反資本主義的映画。


 『ゾディアック』は実際に存在した連続殺人犯“ゾディアック”に魅入られた男たちを、群像劇風に描いた社会派ドラマだし、『ゴーン・ガール』は男女の結婚観の違いをシニカルに描いたブラック・コメディと言えるだろう。純粋なサスペンス映画と言えるのは、隠し財産を狙って屋敷に侵入した強盗たちと、緊急避難用の密室に逃げ込んだ母娘との攻防戦を描いた、『パニック・ルーム』ぐらいではないか?



『ドラゴン・タトゥーの女』(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.


 その意味で、『ドラゴン・タトゥーの女』は、最もテーマ性が全面的に押し出された映画かもしれない。原題 の「Män som hatar kvinnor」は、「女を憎む男たち」という意味。男性優位の社会構造を暴き、女性蔑視と暴力を糾弾する、“性差別”がテーマになっているのだ。「女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話」と言っていいだろう。


 サスペンスという容器の中に、“性差別”というテーマを内包した映画…まさに、デヴィッド・フィンチャー好み!全世界で800万部以上を売り上げた大ベストセラー小説の映画化をフィンチャーに持ちかけたのは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の製作者キャスリーン・ケネディだったらしいが、彼がこの企画に乗ったのは自然な成り行きだったのである。



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