1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. リトル・ダンサー
  4. 『リトル・ダンサー』「故郷」×「初期衝動」×「旅立ち」。バレエ少年の物語に秘められた、心震わせる鍵
『リトル・ダンサー』「故郷」×「初期衝動」×「旅立ち」。バレエ少年の物語に秘められた、心震わせる鍵

(c) Photofest / Getty Images

『リトル・ダンサー』「故郷」×「初期衝動」×「旅立ち」。バレエ少年の物語に秘められた、心震わせる鍵

PAGES


『リトル・ダンサー』あらすじ

1984年、イングランド北部の炭鉱町。11歳の少年ビリー・エリオットは、炭鉱労働者の父と兄トニー、祖母と暮らしている。母はビリーが幼い頃に亡くなっていた。。当時のイギリスは炭鉱不況の真っ只中で、父とトニーはストライキに参加中。ビリーは近所のボクシングジムに通っているものの、ボクシング自体に馴染むことができない。そんな時、ジムの隅で開かれているバレエ教室に興味を持つビリー。もともと音楽好きのビリーはバレエに魅せられ、密かに女の子たちに交じって教室に参加するようになっていく。コーチのウィルキンソン夫人はビリーにバレエの才能を見出し、彼女の指導のもとビリーはめきめきと上達。ウィルキンソン夫人はビリーにロイヤル・バレエ学校への入学を勧め、ビリーもその気になり、家族に内緒で受験を試みるのだが。。


Index


全ては脚本家によるインスピレーションから始まった



 舞台は80年代の英国北東部にある炭鉱町。父も兄も炭鉱夫という一家に生まれた少年ビリー・エリオットは、自分も将来、同じような大人になることを、半ば定められた道として思い描いていた。母はすでに亡くなり、昼間の自宅にはお世話の必要な祖母が一人。そんな日常の中でビリーに人生の転機が訪れる。ふと目にしたバレエ教室の風景に心を奪われ、好奇心に火がついたのだ。どんどん膨れ上がっていくバレエへの想い。「踊りたい!」という情熱。ストライキで炭坑町が揺れる中、彼の信念はやがて運命を切り開き、周囲の大人達の心をも動かしていく――――。


 制作費は500万ドル程度ながら、世界興収はトータルで1億ドル以上。その後のDVDのセールスやTV放映権、ミュージカル化などを考えるとその売り上げはさらに巨大なものとなる。 “ダンシング・ボーイ”が夢の階段を駆け上がっていく姿と軌跡を同じくするかのように、英国生まれのこの小さな映画もまた、公開されるや圧倒的な賞賛の渦に飲み込まれ、10年に1本あるかないかの超名作として認知されるまでとなった。


 これは決して実話というわけではない。全ては脚本家リー・ホールに舞い降りたインスピレーションから始まったもの。もともと自分の故郷を舞台にしたストーリーを考案していた矢先、その脳裏に突如「裏通りを走っていくバレエ・チュチュを着た少年」という強烈なイメージが浮かんだそうだ。すぐさま「これは面白い!」と思い、彼は筆を進めていくこととなる。


 そんな着想から始まったからか、本作のビジュアルはどれも極めてキャッチーなものばかりだ。女の子たちがバレエのチュチュを身にまとう中、一人ビリーだけがTシャツ、短パン姿で練習に励む姿もまた可愛らしいコントラストを残す。初めはバレエへ惹かれてゆく自分にいささか戸惑いを感じながらも、いつしか少年の情熱は、Tレックス、ザ・ジャム、ザ・クラッシュなど英国を代表するバンドの名曲に乗せて、より一層、スパークするのである。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. リトル・ダンサー
  4. 『リトル・ダンサー』「故郷」×「初期衝動」×「旅立ち」。バレエ少年の物語に秘められた、心震わせる鍵