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『サンダーロード』B・スプリングスティーンからジム・カミングスへ。描き継がれるアメリカ庶民の現実

『サンダーロード』B・スプリングスティーンからジム・カミングスへ。描き継がれるアメリカ庶民の現実

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『サンダーロード』あらすじ

愛する母の葬儀で悲しみに暮れるテキサス州の警察官ジムは、娘のピンクのラジカセで、母が敬愛したブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダー・ロード」を流そうとするが…。妻とは別居中、仕事も空回り、トラブルばかりの日常の中で、ジムは親権争いの渦中にいる幼い娘クリスタルとの距離感に苦しみながらも、親子の関係を築いていく。


Index


なぜB・スプリングスティーンの曲が選ばれたのか?



 今大注目の才人ジム・カミングスが、監督、主演、脚本、音楽、編集の一人五役を務めた映画『サンダーロード』は、ブルース・スプリングスティーンが1975年に発表したアルバム「明日なき暴走」の一曲目「涙のサンダーロード(原題:Thunder Road)」がタイトルの由来になっている。


 映画の冒頭、主人公の警官ジェームズが母親の葬儀のスピーチで、母親が大好きだった「涙のサンダーロード」を流そうとする。夢を追うために田舎町を飛び出そうとする若者が恋人に「一緒に行こう」と誘いかける歌詞は、映画のクライマックスともみごとに呼応するのだが、ネタバレになるのでここでは詳しくは触れない。


 数あるポピュラーソングから「涙のサンダーロード」を選んだ理由は、カミングス自身が明かしている。映画『サンダーロード』はカミングスが2016年に発表した同名の短編を長編化したもので、最初の着想は、友人の知人が母親の葬儀で、参列者を前にして歌を歌ったという話を聞いたことだったという。




 一体、その人物はなぜ葬式で歌なんか歌ったのか? カミングスは心情に思いを巡らせ、心を痛めた人間が、いろいろ考えたあげくのことだったに違いないと考えた。そして「もし自分だったら母親の葬式で何を歌うか?」と自問して唯一浮かんだのが、カミングスの母親のお気に入りだった「涙のサンダーロード」だった。


 カミングスはWEBサイト「MUSICBED」のインタビューで、「もし葬式で「涙のサンダーロード」を歌えば、大失敗して大恥をかくだろうし、本当に可笑しくて、それでいて誠実な行為になるだろうと思った」と語っている。このコメントを言い換えれば、『サンダーロード』は「誠実さを追い求めるあまり、醜態をさらしてしまう不器用な男」の物語であると言えるだろう。



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