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『SKIN/スキン』“見た目”に依存する私たちへ――感動実話に潜む、差別への警鐘

(c) 2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.

『SKIN/スキン』“見た目”に依存する私たちへ――感動実話に潜む、差別への警鐘

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差別を引き起こす、「見た目」への依存



 『SKIN/スキン』の全体的なテンションやテーマについてつづってきたが、ここからはより中身に踏み込み、細かな描写についても考えていきたい。タイトルにもなった「肌」、そして「差別」についてだ。


 本作の序盤、クレーガーが発するセリフが興味深い。「黒人やイスラム教徒や同性愛者が憎いわけじゃない。奴らにも生存権はある。だが主張したい。アメリカから出ていけ!」。対して、ダリルのセリフはこうだ。「殺す・終身刑にする・転向させる――。この3つしか解決策はない」。


 クレーガーのセリフにどこまで真意が含まれているかは定かではないが、「憎いわけじゃない」という部分は極めて重要だ。私怨がないのなら、なぜ排斥しようとするのか? 「自分たちの国だから」が理由だろうが、劇中で描かれる彼らの差別の起因に、明確な動機は存在しない。黒人だから、イスラム教徒だから――。クレーガーたちは「肌」と「属性」だけで他者を判断している。つまり、見た目によるところが大きい。


 これはブライオンの身に、“しっぺ返し”という形で突き刺さっていく。彼は見た目で周囲から避けられ、恋人のジュリーまで近所から疎まれ、クレーガーたちの元から逃亡を図る際にも、「見た目ですぐ居場所がばれる」足枷にもなってしまう。職業安定所に行くも仕事はもらえず、雪かきの仕事をする中で、ブライオンは同僚から手袋を渡される。



『SKIN/スキン』(c) 2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.


 温かみを感じさせるシーンだが、手袋は肌を隠すアイテムであり、比喩的な表現のようにも感じられる(別のシーンだが、多種多様な車が、雪によって真白く染まる描写も、実に意味深)。ブライオンが選ぶ「タトゥー除去」には様々な物語的な意味が込められているが「見た目で差別する」という人間の根本的な卑しさにまで、踏み込んでいるともいえよう。


 劇中ではハロウィンも描かれるが、ブライオンがメイクを取り去るとタトゥーが見え始め、鏡に向かって「悪い男かもしれない」とつぶやくシーンが秀逸だ。どれだけ自分を繕おうが、肌に刻まれた過去からは逃れられないということ。これは『ジョーカー』(19)の逆のアプローチともいえ、同作ではメイクを施すことで“自分自身”が消失していたが、『SKIN/スキン』ではメイクを落とすことで自分が戻ってきてしまう。この場面が、のちのタトゥー除去にもつながっていく。


 「見た目による差別」は、ブライオンだけでなく、ジュリーにも及ぶ。太っている彼女は、クレーガーのグループから揶揄され、暴言を吐かれる。白人であり、差別の対象ではないはずなのに、だ。このシーンには、なかなかハッとさせられる。差別というものは往々にして「違和感」から生まれ、マジョリティがマイノリティを排斥するようにできている。自分の「価値観」にそぐわない人間を「仲間外れ」にすること、差別につながるその恥ずべき行為は、私たちの身近にも、いや私たち自身の中にも、常に潜んでいるのだ。


 先に書いたように、『SKIN/スキン』は1人の男性の“転向”を描く感動作だ。しかし、「見た目で他者を判断する」根本的な問題については、解決策を提示してはくれない。今もなお、全世界で日常的に行われている差別や排斥。ブライオンが行った行為が、差別を被ることへの防衛策にも見えてしまう世界に、私たちは生きている。


 人を外見で判断せず、かつ自分らしく生きていこうとするジュリーが象徴する、わずかな希望――。これをよすがに、考え続けていくこと。本作は、その出発点だ。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema



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作品情報を見る



『SKIN/スキン』

2020年6月26日(金)より新宿シネマカリテ、ホワイトシネクイント、アップリンク吉祥寺にてロードショー。以降全国順次公開

(c) 2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.

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