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『透明人間』ジャンル映画をアップデートした低予算コンビの偉大な成果

(c) 2020 Universal Pictures

『透明人間』ジャンル映画をアップデートした低予算コンビの偉大な成果

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エリザベス・モスの躍動する肉体と面構え



 ワネルが、「この映画の成否は主演女優のスキルにかかっていた」と振り返るのは、間もなくシーズン4の制作が始まるHuluの人気ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(17~)の、エリザベス・モスだ。


 『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』では、架空のディストピアで侍女と呼ばれ、生殖の奉仕を強要されるヒロインを演じてエミー賞の主演女優賞に輝いたモス。彼女がホラー映画に可能性を見出したのは、ブラム製作、ジョーダン・ピール監督の『アス』(19)に出演した時のことだ。その時、ルピタ・ニョンゴの渾身の演技に触発されたモスは、ホラー映画にこそ女優としての可能性があることを実感したという。「あんな演技ができるなら、他に望むものはない」とすら感じたモスは、今回、願ってもない役柄のオファーを受けて、即行で承諾の意志を伝え、現場に望んだ。



『透明人間』(c) 2020 Universal Pictures


 しかし、モスに課せられたミッションは過酷だった。撮影中には、冒頭の脱出シーンに始まり、過酷なスタントを要求される場面も幾つかあった。ワネルの演出は、モスに”ジェイソン・ボーン”並みの素早い動きを要求、そのような動きが決して得意ではないモスは、自宅のリビングにスポーツマシーンを入れて、日々フィットネスで汗を流したこともあったとか。


 躍動的とは言い難いモスの肉体が、重力に逆らって動き回る様は、それらしく体を鍛え上げた女優が演じるアクションとは異なり、異様なリアリズムを感じさせる。彼女にしか見えない何かと必死で戦っているという臨場感が半端ないのである。


 か弱い逃亡者だったセシリアが、徐々に心の奥底に怒りのマグマを宿した戦士へと変貌していく。モスの怪演は、想像に難くないはずだ。



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