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『裸のランチ』クローネンバーグ流“変態”的世界の極みは、こうして生まれた!

NAKED LUNCH Copyright(c) 1991 Recorded Picture Company (Productions) Limited Naked Lunch Productions Limited

『裸のランチ』クローネンバーグ流“変態”的世界の極みは、こうして生まれた!

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誰も無関心ではいられないイビツな世界



 もちろん、ビジュアル的に鮮烈なだけでは意味がない。クローネンバーグが鬼才と呼ばれるのは、それらに物語のテーマが密接に結びついているためだ。


 主人公リーが逃げ込むインターゾーンは、結局のところ現実逃避の世界に過ぎない。打ちのめされた人間には現実逃避が必要となるときがある。ある人にはアルコール、ある人には音楽、またある人には交友かもしれない。もちろん、それは悪いことではないが、人は時として、そういう現実逃避に依存してしまう。そして、それに付け込む、得体のしれない権力も存在するのだ。そんな世の構図を、クローネンバーグは本作で見せつける。これは現代社会にも通じるテーマではないだろうか。



『裸のランチ』NAKED LUNCH Copyright(c) 1991 Recorded Picture Company (Productions) Limited Naked Lunch Productions Limited


 むろん、これは基本的な解釈の一例に過ぎない。イマジネーションにあふれたクローネンバーグ作品は言葉による丁寧な説明を避け、センセーショナルなストーリーとおぞましいビジュアルで挑発しながら、観客の心に強烈な何かを投げかける。共同製作者のガブリエラ・マルティネリは、本作についこう語る。「良いトリップになるか、悪いトリップになるかは見る人それぞれ。確かなのは、誰も無関心ではいられないということね」


 リーがクリーチャーたちに急き立てられて書いた報告書は、結果的に小説「裸のランチ」となる。映画はバロウズがどんな魂の旅を経て、この難解な小説を書いたのかを浮き彫りにするファンタジーとも受け止められる。


 確かに、原作からかけ離れてはいる。しかし、作者への、また原作への、深淵にまで掘り下げたリスペクトが宿り、それがグロテスクなまでに開花した、ある意味、美しい”映画化”でもあるのだ。異様な世界へのトリップを、一度はぜひ体感して欲しい。



文: 相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。



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『裸のランチ』

BD発売中 BD|KIXF-775|¥2,500+税

発売・販売キングレコード

NAKED LUNCH

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