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『レ・ミゼラブル』ミュージカル映画としては異例の「撮影しながら生の歌を録音」で大成功

(c)Photofest / Getty Images

『レ・ミゼラブル』ミュージカル映画としては異例の「撮影しながら生の歌を録音」で大成功

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『レ・ミゼラブル』あらすじ

ジャン・バルジャンは、パンを盗んだ罪で19年間服役した後、仮出獄するが、生活に行き詰まり、再び盗みを働いてしまう。その罪を見逃し赦してくれた司教の真心に触れた彼は、身も心も生まれ変わろうと決意し、過去を捨て、市長となるまでの人物になった。そんな折、不思議な運命の糸で結ばれた女性ファンテーヌと出会い、彼女から愛娘コゼットの未来を託されたバルジャンは、ジャベールの追跡をかわしてパリに逃亡。彼女に限りない愛を注ぎ、父親として美しい娘に育てあげる。しかし、パリの下町で革命を志す学生たちが蜂起する事件が勃発。誰もが激動の波に呑まれていく…。


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過去にも例が少ない、撮影時の歌唱の使用



 ミュージカルを舞台で観る醍醐味。それはライヴ感なのは言うまでもない。目の前で実際に俳優が歌い、踊る。いくら映画が再現しようとしても、この点だけは舞台をしのぐことは不可能だ。ダンスはともかく、歌は明らかに「録音」されたものを、観客が聴くことになるのだから。


 ミュージカル映画は、撮影前に歌を録音しておくことが基本。その音源に合わせて、俳優は演技をするわけだ。しかし、『ようこそ映画音響の世界へ』(19)で、バーブラ・ストライサンドが『ファニー・ガール』(68)では撮影の際に実際に歌い、その音を使ってほしいと頼んだ事実が明かされたように、事前録音を回避するケースもある。バーブラの場合、自身が舞台で演じた役ということもあって固執したと思われるが(結果的に彼女は本作でアカデミー賞主演女優賞を受賞)、テレビの音楽番組などでも一般の視聴者に口パクがわかるようになってきた近年、撮影と同録のアプローチは正攻法ともいえる。


 2012年の『レ・ミゼラブル』は、これを実践した画期的ミュージカル映画になった。大量の水など周囲の音が邪魔になるオープニングシーンを除き、ほぼすべての曲が、撮影の際にライヴ録音され、その音源がそのまま本編で使われ、サウンドトラックアルバムになったのである。


『レ・ミゼラブル』予告


 もちろんこの手法は簡単ではない。録音用のスタジオで収録した方が、質の高い仕上がりが得られるのは明らかだからだ。『レ・ミゼラブル』の撮影現場では俳優たちが小さなイヤーピース(ワイヤレスイヤホン)を着け、セットの外部で演奏されるピアノの伴奏に合わせて歌った。ピアノはキーを一定に保つためであり、曲のテンポはあくまでも俳優に任せられた。そのテンポにピアノが伴奏で合わせたのである。こうしてセットで収録されたボーカルの音源に、ポストプロダクションでフルオーケストラの伴奏が加えられた。


 「たとえば3ヶ月前にスタジオで録音した際の感情を、撮影時に俳優がちゃんと思い出すことができるのか? それは難しいだろう」と話すトム・フーパー監督は、ヒュー・ジャックマンとテスト撮影を行い、この方法がうまくいくと確信したという。



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