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『ザ・セル』は解剖台の上でミシンとこうもり傘が偶然出会ったように美しいか?

(c)Photofest / Getty Images

『ザ・セル』は解剖台の上でミシンとこうもり傘が偶然出会ったように美しいか?

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アートの魅力と『ザ・セル』の魅力



 『ザ・セル』で引用・模倣されたアート作品は、とっつきづらい難解さがあると思っている人もいるかもしれない。しかし『ザ・セル』自体はアート作品を知らなくても楽しめる強度を持った作品である。つまり、引用された各アート作品の持つ背景や意味は言語化(コンテクスト化)こそされていないが意識の中で理解はされた、ということになる。


 本来アート作品の楽しみ方は印象を言語化するものでは無い。もっと広く言えば、ほとんど全ての物事の理解は言語化するのが「最終目的」では無い。さらに言えば言語自体に限界はある。例えば文字や声で再現不可能な音は存在する。


 逆に意識の中は無限だ。再現不可能な音だって、意識の中で思い出すことができる。同じように言語化できない「印象」だって世の中にはある。


 『ザ・セル』に引用されたアート作品の中には、頭の中だけでしか印象を持つことを許さない、何とも言えない、しかし確固たる印象を持たざるをえない作品が多くある。それらを「殺人犯の意識の中を歩き回る」という物語に落とし込むことで、すんなりと咀嚼のしやすい形にしているのが『ザ・セル』一番の魅力であろう。



文: 侍功夫

本業デザイナー、兼業映画ライター。日本でのインド映画高揚に尽力中。



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