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『ランボー ラスト・ブラッド』40年近くに渡るシリーズから考える、ジョン・ランボーの本質とは? ランボーシリーズ徹底解説!

(C)2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.

『ランボー ラスト・ブラッド』40年近くに渡るシリーズから考える、ジョン・ランボーの本質とは? ランボーシリーズ徹底解説!

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『ランボー ラスト・ブラッド』(19) 
そして彼は立ち戻る、“一人だけの軍隊”に!!



『ランボー ラスト・ブラッド』予告


監督:エイドリアン・グランバーグ 101分


 強靭な肉体を訓練で研ぎ澄まし、世界の戦地で戦い続けてきたジョン・ランボー。アメリカに帰国した彼は、親友のマリアとその孫娘ガブリエラとともに、故郷の牧場で平穏に暮らしていた。だが実の父親がメキシコにいると聞いたガブリエラが現地に行き、そこで人身売買を目的とした凶悪犯罪組織に誘拐されてしまう。


 これまでのシリーズからは逸脱した展開に思える『ランボー ラスト・ブラッド』(以下『ラスト・ブラッド』)だが、もともとメキシコの麻薬組織を敵に設定するアイデアは、『ランボー 最後の戦場』(08 以下『最後の戦場』)の製作時に候補のひとつとして検討されてきたものだ。しかし時代の機微を読み、社会的動向を鋭く察知するスタローンの正義的アプローチは、まずミャンマーの軍事政権に切っ先を向けるよう動いた。つまり『ラスト・ブラッド』の構想自体は以前から温められており、決して急ごしらえのものではない。 


 なにより「家族」というコミュニティへのアクセスはランボー自身の願望でもあり、スタローンはそんな彼に最も望むものを与えたのだ。しかしその『96時間』シリーズ(08〜14)を思わす設定も、同シリーズにおけるリーアム・ニーソンのように、敵をガンガン倒して娘を救い出す展開にはならない。ランボーはガブリエラを救出するため、単身で組織のアジトへと潜入する。だが血も涙もない連中の残忍さによって、彼はかつてない大きな犠牲を払うことになってしまう。いわば本作は、マイケル・コルレオーネがたどった『ゴッドファーザー PARTIII』(90)にも似た悲劇を共有するのだ。


 怒りが最大限に達したランボーは組織への制裁をはたすため、トラップを仕掛けた牧場へと連中を誘い込む。そして『ランボー』(82)のように地の利を活かし、容赦なきゲリラ戦へと臨んでいくのだ。こうした嚆矢回帰は、あたかも第1作目を反復するかのようである。そして犯罪組織の構成員たちを相手にたった一人で立ち向かうところは、デイヴィッド・マレルによる原作小説の邦題「一人だけの軍隊」を体現している。しかも映画化の際に劇中で人が死なないよう配慮した『ランボー』とは異なり、原作同様におびただしい数の死傷者や残酷描写を見せている。


 つまり『ラスト・ブラッド』は『ランボー』に戻るだけでなく、さらに原点である「一人だけの軍隊」へと間隔を詰めることで、前作『最後の戦場』で布石となった、ランボーの本質へとさらに迫ろうとしているのだ。



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