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『エルム街の悪夢』フレディ・クルーガーがもたらした大成功とは

(c)Photofest / Getty Images

『エルム街の悪夢』フレディ・クルーガーがもたらした大成功とは

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よく喋る殺人鬼・フレディの魅力



 ホラー映画で人気の殺人鬼と言えば、やはり『13日の金曜日』(80)シリーズのジェイソンが筆頭だろう。他に『悪魔のいけにえ』(74)のレザーフェイスや『ハロウィン』(78)のマイケル・マイヤーズ。『エイリアン』(79)シリーズのエイリアン:ゼノモーフやゾンビなど様々な人気の「人殺し」たちがいる。彼らに共通するのは「喋らない」ことだ。


 何を考えているのか解らない。言葉が通じそうにないから説得もできない。黙ったままコチラに向かって来る彼らは、謎めいて神秘性すら孕んだ恐ろしい存在である。


『13日の金曜日』予告


 一方、フレディ・クルーガーは良く喋る。ターゲットにした若者のコンプレックスやトラウマに塩を塗り込むような言葉を、俗っぽいジョークを混じえてネットリと投げつける。


 「喋らない殺人鬼」なら、自分に向けられた殺意は、もしかしたらディスコミュニケーションが原因で、相互理解がなされれば助かるかもしれない。そんな希望がある。しかし、言葉で明確に殺意を表明する「喋る殺人鬼」相手では逃げきるか、倒すかしなければ助からない。


 しかもフレディは夢の中の存在であり、その特性を活かし、手のひらで転がすように、魔法のような手口でタップリと嫌がらせをした上で殺害する。しかし、殺されるのはフワついた若者たちだ。ここで観ている観客の感情は「逆転」とも言える変化をしていく。


 もはや殺される若者に同情はしない。フレディに肩入れし、フワついた若者をバカにしながらフザけて殺していく様子をサディスティックな想いに耽溺して楽しむのである。


 ジェイソンやマイケル・マイヤーズもフワついた若者を殺すが、喋らないが故に黙々と仕事をこなすような、近寄りがたいストイックさがある。一方、喋り続けて楽しそうに若者を殺すフレディの姿は肩入れしやすく、他の「殺人鬼」スターたちとは一線を画すと言えるだろう。


 この類い稀な魅力を放つフレディ・クルーガーにより『エルム街の悪夢』は特大ヒットを飛ばしていく。




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