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『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』オスカーノミネートを果たした夫婦脚本家の執筆術

『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』オスカーノミネートを果たした夫婦脚本家の執筆術

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まずは起こったことを洗いざらい書きつくす



 アパトーが彼らに最初に命じたのは「二人の間で起こったことを洗いざらい書き出してしまえ」ということだった。まずは全てを俯瞰する上でも、あらゆるエピソードを玉石混合状態で俎上に載せてしまうこと。これは非常に大切な作業だった。ただし、当然ながら書き出した文量は相当なものになった。これをなんとか2時間分に抑えられるように、取捨選択したり、面白い部分は膨らませたりしながら、整理していかねばならない。


伝えたいことの本質が変わらないなら膨らませるのもOK



 自らの体験談を脚本化するとなると、どうしても「事実に忠実か否か」で悩んでしまうことがある。だが、そのジレンマを見抜いていたのか、アパトーは彼らに「事実から“本質”を抽出せよ。本質が変わらなければ、発展させても丈夫」とアドバイス。これによって彼らは、「伝えたい本質を観客のもとへ運ぶにはどうすべきか」を重視し始める。




 LAタイムズの記事の中でクメイルが持ち出している例が面白い。例えば、病院の待合室で世界の終わりのような絶望的な気持ちで座っているとする。だが、ただ坐っているだけでは動きがなく、観客に気持ちは伝わらない。様々な要素を足したり引いたり、動かしたりしながら、伝えたい“エモーショナルな本質”へと観客を誘うこと。それが重要だというのだ。それゆえ、本作には事実とは異なる部分もたくさんある。エミリーの父母に関するエピソードはほぼフィクションだし、クメイルがUberの運転手という設定も事実と異なる。だが、かといって、決して本質を見失ってはいない。むしろそれらを守るために、膨らませたものばかりなのだ。



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