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『素敵なダイナマイトスキャンダル』と併せて知る、時代を盛り上げたエロ雑誌業界の盟友たち

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

『素敵なダイナマイトスキャンダル』と併せて知る、時代を盛り上げたエロ雑誌業界の盟友たち

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「日本のヒュー・ヘフナー」ことエロ業界の巨人、山崎紀雄



 もう一冊は、やはり昨年刊行されたノンフィクション『 裸の巨人 宇宙企画とデラべっぴんを創った男』(双葉社)だ。


 本書の主人公は、山崎紀雄(奇しくも末井、池田と同じ1948年生まれ。ただし山崎の誕生日は4月1日なのでぎりぎり早生まれ。学年はひとつ先輩となる)。タイトルにあるように、アダルトビデオ制作会社の先駆けである「宇宙企画」を設立し、英知出版で『デラべっぴん』などコンビニでも買えるポップなエロ雑誌を送り出して、バブル時代をピークとしてエロ業界の席捲した伝説の男の一代記だ。著者は多岐に渡って活躍するフリーライターの阿久真子で、『週刊大衆』(双葉社)の連載を加筆してまとめたもの。本書の表紙には末井が「急上昇! 急降下!! 日本のヒュー・ヘフナーになった男のハチャメチャなジェットコースター人生!!!」というコメントを寄せている。ヒュー・ヘフナー(1926年~2017年)とは、あの雑誌『PLAYBOY』を発刊した実業家で、確かに本書を読むと山崎の全盛期の豪奢すぎるセレブ生活はそれくらいの迫力がある。


 この『裸の巨人』も『素敵なダイナマイトスキャンダル』と同じく、異色の自己実現を果たした青春物語としても抜群に面白い。山崎は立正大学を卒業後、SM作家・団鬼六の「鬼プロ」を拠点にビニ本(書店販売の際にビニールで包装し、立ち読み禁止にしていた過激な内容のエロ本)作りを始め、その延長でグリーン企画という出版社に制作の統括者として入社。彼の右腕としてビニ本編集に携わっていたのが、友人でもあった現・コアマガジン社長の中沢慎一だ。そしてグリーン企画が新しく立ち上げた出版社、セルフ出版に入社してきたのが、末井昭である。彼はちょいちょいグリーン企画からビニ本のデザインや撮影の仕事を請け負っていた。



『素敵なダイナマイトスキャンダル』©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会


 当時、グリーン企画とセルフ出版は高田馬場の同じ雑居ビルの中にあった。そこで山崎と末井は出会っており、中沢も含めて仕事も一緒にこなすようになる。


 本書の巻末にはこの三人、山崎と末井と中沢の盟友座談会が掲載されているのだが、その破格の人となりと共に、彼らが豪快に駆け抜けた時代の空気がぷんぷん伝わってくる。


 1978年、山崎はグリーン企画を退社。宇宙企画を立ち上げたのは1981年。まだビデオデッキの世帯普及率が10%程度の時代に鋭い予見性を発揮。瞬く間にどんどん業績を伸ばした。翌1982年に英知出版を買い取り、ビデオと雑誌のメディアミックスによる事業拡大を展開。その中で最も売れた雑誌が1985年創刊の『デラべっぴん』だ。最盛期は39万部発行。これはちょうど末井が白夜書房で『写真時代』の編集長として気を吐き、35万部の発行部数を誇っていた頃と重なる。


 だが“祭り”の季節はいつまでも続かない。英知出版はやがて巨額の負債を抱え込むようになり、2007年に幕を閉じた。


 冨永監督の映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、末井が40歳の頃、『写真時代』が警視庁からの摘発を受けて廃刊に追い込まれ、『パチンコ必勝ガイド』の仕事に移行する1988年で終わっている。


 それはちょうど昭和の終わり。翌年1989年の1月8日から平成が始まる。まさにハチャメチャに濃厚で、エキサイティングな日々の狂騒を描いた映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、昭和という自由な祭りの時代へのオマージュと言えるのかもしれない。



文: 森直人(もり・なおと)

映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「メンズノンノ」「キネマ旬報」「映画秘宝」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。



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『素敵なダイナマイトスキャンダル』

監督・脚本:冨永昌敬

Blu-ray&DVD  好評発売中

発売・販売元:バンダイナムコアーツ

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

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