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『ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦』ナチス・ドイツ史上、最も異色の事件「エンスラポイド作戦」を描いてきた映画の系譜

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『ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦』ナチス・ドイツ史上、最も異色の事件「エンスラポイド作戦」を描いてきた映画の系譜

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『ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦』あらすじ

1941年、ナチス占領下のチェコスロバキア。2人の若者ヨゼフ・ガブチークとヤン・クビシュがパラシュートで降り立つ。ロンドンに本拠を置くチェコスロバキア亡命政府の密命を帯びた彼らの目的は、ナチスNo.3と言われるラインハルト・ハイドリヒの暗殺。2人を匿うチェコ国内のレジスタンスたちの中には、報復を恐れて暗殺に反対する者も少なくない。それでも2人の女性レジスタンスのサポートを受けながら、作戦決行に向けて偵察と情報収集に奔走するヨゼフとヤンだったが…。


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ナチスの高官ハイドリヒ暗殺に向けた「エンスラポイド作戦」の実態とは?



     『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』(2016年/監督:ショーン・エリス)は、全編を貫く一触即発の緊迫感が凄まじい。いわゆる社会派の枠を超え、シャープなサスペンスやアクションなど、映画としての豊かな魅力を備えながら、歴史の中のひとコマを“ままならぬ現実”として生々しく浮き上がらせる鋭さがある。


     戦争映画、特に第二次世界大戦を題材にした映画は最近も数多く作られているが、その中で突出したテーマとなっているのが独裁者アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツの蛮行だ。人類の歴史上の特異点と言えるこの残虐で破壊的な政治・軍事活動は、その強烈さゆえに、様々なアングルから膨大な数の作品で取り上げられてきた。皮肉な話だが、映画史の中で繰り返し使用されたモチーフを数えたら、ナチスはかなり上位にランキングするはず。


     そういった「ナチス映画」の中で、異色の題材ながら、数度に渡り映画化されているのが「エンスラポイド作戦」である。1942年、ドイツ統治下の東欧チェコで、ナチス親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画を指すコードネームがそれだ(エンスラポイドとは「類人猿」の意味)。


     ハイドリヒは「金髪の野獣」などと異名を取り、ゲシュタポ(秘密国家警察)を束ね、ユダヤ人迫害・虐殺を推し進め、ヒトラー、ヒムラーに続く当時ナチスのNo.3と言われていた男である。


     「エンスラポイド作戦」の経緯とは、どんなものか。政府の指令でイギリスからパラシュートで送り込まれた兵士たちが、プラハのレジスタンス(抵抗組織)の協力を得て、決死の姿勢で危険な任務――ハイドリヒ暗殺の遂行を目指す。ただし、この計画が特異なのは、たとえ成功してもナチスからの徹底的な報復が予測されることだ。実際、作戦を受けてナチスが行った無差別処刑の粛清は凄まじく、実行部隊やその周囲ばかりでなく、大量の一般市民の犠牲を出した。現実的には代償の大きすぎた作戦と言われている。


     その作戦決行の推移から報復への顛末をソリッドなリアリズムで描いた新作が『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』だ。台詞こそ英語ながら、撮影は実際にチェコ共和国プラハで行い、手持ちカメラを駆使した実録物の傑作に仕上がっている。


     ここでは本作に絡めて、過去「エンスラポイド作戦」を描いた映画の中から、現在でもDVDなどで気軽に視聴可能な2本の名作を紹介しよう。見比べてみると、同じ事件でも描き方でこんなに印象が変わるのか、という格好のサンプルにもなるはずだ。



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