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果てなき模索の物語『ラブレス』が現代に投げかける問いとは

©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS

果てなき模索の物語『ラブレス』が現代に投げかける問いとは

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※2018年4月記事掲載時の情報です。


『ラブレス』あらすじ

一流企業で働くボリスと美容サロンを経営するジェーニャの夫婦。ふたりは離婚協議中で、家族で住んでいるマンションも売りに出そうとしている。言い争いのたえないふたりは、12歳の息子、アレクセイをどちらが引き取るのかで、激しい口論をしていた。アレクセイは耳をふさぎながら、両親が喧嘩する声を聞いている。


ボリスにはすでに妊娠中の若い恋人がいるが、上司は原理主義的な厳格なキリスト教徒で、離婚をすることはクビを意味していた。美容サロンのオーナーでもあるジェーニャにも、成人して留学中の娘を持つ、年上で裕福な恋人がいる。ジェーニャは恋人と体を重ね、母に愛されなかった子供時代のこと、そして自分も子供を愛せないのだと語る。「幸せになりたい。私はモンスター?」と尋ねる彼女に、恋人は「世界一素敵なモンスター」だと答える。ボリスもジェーニャも、一刻も早く新しい暮らしを始めたいと、そればかりを考えていた。


両親がデートで家を留守にするなか、息子が通う学校からアレクセイが2日間も登校していないという連絡が入る。自宅にやって来た警察は、反抗期だから数日後に戻るだろうと取り合ってくれず、ボリスとジェーニャは市民ボランティアに捜索を依頼する。夫婦とスタッフは、心当たりのある場所のひとつとしてジェーニャの母の家を訪ねるが、そこにはアレクセイの姿がないばかりか、彼女は別れて中絶しろと言った忠告を聞き入れなかった娘に自業自得だと、激高しながら告げるのだった。


帰りの車中で「結婚したのは母から逃げたかったから。あなたを利用したつもりが、家族を求めるあなたに利用された」と言い、中絶をすればよかったと後悔の念を口にするジェーニャ。捜索を続けるなか、アレクセイがチャットで話していた“基地”が、森の中の廃墟ビルの地下にあることが、クラスメイトの証言から判明する。夫婦と捜索隊は、その廃墟へと足を踏み入れるが……。


Index


崩壊する家族



 ロシアの社会と家族の姿を描き続けるアンドレイ・ズビャギンツェフ監督。初の長編映画『 父、帰る』(2003年)がヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞と新人監督賞を同時受賞するという快挙を成し遂げて以降、発表する長編すべてが主要な映画祭や映画賞で高く評価されてきた。5作目にして最新作となる『ラブレス』もまた、昨年のカンヌ国際映画祭のコンペ部門で上映され、審査員賞を獲得。今年のアカデミー外国語映画賞にもノミネートされた。


 今作の核となるのは、一流企業で働くボリスと美容サロンを経営するジェーニャの夫婦、そして12歳の息子アレクセイ。夫婦の関係は冷え切っている。ボリスには妊娠中の若い恋人、ジェーニャには年上で裕福な恋人がいて、早々に離婚し人生をリスタートさせたいと望んでいるのだ。息子を引き取りたくない2人は大声でののしり合い、それを聞いたアレクセイは声を押し殺して泣く。



『ラブレス』©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS


 ある朝家を飛び出したアレクセイは、そのまま行方不明になる。仕事や恋人との逢瀬で留守がちな夫婦は、息子の不在を失踪2日目に小学校からの連絡で知る始末。愛なき家族が音を立てて崩れ壊れていくさまを、私たち観客は見守るしかない。



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