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『女神の見えざる手』強い女を演じ続ける、ジェシカ・チャステインとは何者なのか

(C)2016 EUROPACORP - FRANCE 2 CINEMA

『女神の見えざる手』強い女を演じ続ける、ジェシカ・チャステインとは何者なのか

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舞台でたたき上げた演技力で、緩急交えた女性の多様な顔を表現



 ジェシカはカルフォルニア州のサクラメントで育ち、母はビーガンのシェフ、養父は消防士で、それぞれの子供を含め大家族の中で愛情深く育った。だが、実の父親にはいろいろと問題が多かったようで、幼い時は、父親から逃れるため、一時は姓を変えて転居を繰り返したという。このような背景もあってか、弱き者への眼差しは繊細で、強者の論理には徹底して異を唱え、果敢にふるまう。この辺りは、役柄と本人のパーソナリティの共通点を見出すことが出来て興味深い。



『女神の見えざる手』(C)2016 EUROPACORP - FRANCE 2 CINEMA


 ただ、彼女のすごいところは、ただ強い女を演じるだけではなく、弱い面をきちんと演じられ、柔らかさも出せるところである。自身のプロデュース作『 ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』(2017)ではナチス占領下のポーランドで、ユダヤ人を匿った動物園の運営者である妻役で、戦局で揺れる女性の戸惑いや不安を存分に演じてもいる。


 ニューヨークのジュリアードで演劇を学び、当初は舞台からキャリアを積み、テレビドラマに進出、そして映画と段階を踏んでキャリアを積み重ねてきたこともあり、確かな演技には定評がある。また、仲間愛の強い姉御肌の人でもあるようで、『アメリカン・ドリーマー』では、先にキャスティングされていたジェシカが、夫役にジュリアードの同級生であるオスカー・アイザックを推薦。一緒に夫婦役を演じた経緯もある。


 ここ数年、単純に悪女と言いきれない、一筋縄でいかない女性像で話題を集めてきたが、グザビエ・ドランの新作では、構成の変更上、究極の悪女役を演じたジェシカの場面がそっくりそのままカットされたようで、これを機に、悪女役からしばらく遠ざかるかもしれない。


 果たして、『女神の見えざる手』を越える強い女は現れるのか。ジェシカ・チャスティンの今後の選択を、ワクワクしながら見守りたい。



文: 金原由佳(きんばら・ゆか)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」「装苑」「ケトル」「母の友」など多くの媒体で執筆中。著書に映画における少女性と暴力性について考察した『ブロークン・ガール』(フィルムアート社)がある。『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)、『アジア映画の森 新世紀の映画地図』(作品社)などにも寄稿。ロングインタビュー・構成を担当した『アクターズ・ファイル 妻夫木聡』、『アクターズ・ファイル永瀬正敏』(共にキネマ旬報社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワネットワーク)などがある。



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作品情報を見る



『女神の見えざる手』

DVD&Blu-ray発売中

DVD:3,900円 (税抜) / ブルーレイ:4,800円 (税抜)

発売元:株式会社キノフィルムズ/木下グループ

販売元:ハピネット

(C)2016 EUROPACORP - FRANCE 2 CINEMA


※2018年5月記事掲載時の情報です。

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