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『ターミネーター2』を産み、ジェームズ・キャメロンを支えた“母性”『ターミネーター2 3D』

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『ターミネーター2』を産み、ジェームズ・キャメロンを支えた“母性”『ターミネーター2 3D』

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『ターミネーター2』あらすじ

1991年公開のアメリカ映画。1984年の『ターミネーター』の続編。サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)とターミネーターの死闘から10年が経過した1994年のロサンゼルス。「1997年8月29日に核戦争が勃発し、人類が滅亡する。」という危機を訴えるサラは、精神病院に拘束されていた。一方、未来の指導者となる運命を背負った10歳の息子ジョン・コナー(エドワード・ファーロング)は、養父母に引き取られているものの荒れた生活を送っていた。そんなある日、未来から2体のターミネーターがやって来る。1体はスカイネットからジョン抹殺の使命を与えられた、変幻自在の液体金属で作られているT-1000(ロバート・パトリック)。もう1体はジョンを守るために未来の彼自身によって送り出されたT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)。T-1000はジョンを狙い、その姿を変えながら執拗に追いかけてくるが、身を挺してジョンを守り抜くT-800。その後T-800によって母サラの話が真実であることを知ったジョンは、彼女を救い出すためT-800と共に病院に向かう。ちょうど病院を脱走しようとしていたサラと、ジョンの手がかりを求めて病院にやってきたT-1000、そこへジョンとT-800も到着し、鉢合わせてしまう三者。躊躇なく襲ってくるT-1000と死闘の末、何とか逃げ出すサラとジョンそしてT-800。サラはかつて自身が殺されかけたターミネーターと同じ型のT-800のことを信じることが出来ないが、ジョンとT-800の交流を目の当たりにし、次第にT-800を受け入れていく。。


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人間性と母性の間で揺れたサラとリプリー



 全く新しい映像体験であったがゆえ、技術的側面が強調されてしまうジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター2』(以下『T2』)だが、リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーの強い女性像も我々の心を掴んだのは間違いない。前作『ターミネーター』ではごく普通の女子学生で守られる立場であったサラが、『T2』では徹底的に鍛え上げた身体にタンクトップをまとい、重火器を巧みに扱い戦う姿には、驚くとともに憧れを抱くものも多くいた。実際、リンダ・ハミルトンはサラを演じるために、週に6日フィジカルトレーニングや銃火器の扱いに励んだほか、柔道のような格闘技や鍵を開けるピッキング技術すら学んだという。


 しかし、キャメロンが以前に監督した『エイリアン2』が1986年に公開され大ヒットしていたことで、サラ・コナーは、シガニー・ウィーバー演じるエレン・リプリーと比較されてしまう。結果、キャメロンは強い女性好きというレッテルを貼られることにもなったのだ。『T2』と『エイリアン2』は、強い女性が子どもを守るために大いなる脅威と戦うといったところが共通する。だが、キャメロンは公開時のインタビューで「リプリーは最初から戦士じゃない。その部分が引き出されるのは後半になってからだ。それにくらべるとサラは最初から鍛えられた戦士だ。ふたりはちがう方向から旅しているといえる。」(キネマ旬報 1991年9月下旬号)と答えている。


 サラとリプリー、2人とも母性という強さが魅力的な女性だ。しかし、キャメロンが明かしたようにちがう方向から旅をしている。ここに『T2』の面白さが隠れている。キーワードは“人間性(自由意志)”と“母性=(強さ)”の獲得タイミングと決着の付け方だ。


 『エイリアン2』では、自らの判断(自由意志)でエイリアンのいる惑星LV-426へ戻ることを決めたリプリーが、調査の途中で保護した少女ニュートを守るべく母性を発揮し、エイリアンの母であるクイーンと母同士の戦いに臨むという流れになる。


 一方で『T2』のサラは、息子ジョンを守るために何もかもを投げ打ち、挙句に精神病院に入れられてしまうという圧倒的な母性を持って物語はスタートする。しかし、「審判の日」のイメージに苛まれ自由意志は失われていた。さらにジョンと再会するもコミュニケーションはうまくいかないなど、母性はあるが人間性を喪失していたともいえる。きっかけは、サイバーダイン社の技術者マイルズ・ダイソンの暗殺失敗だった。あそこでサラは人間性を取り戻し、ジョンの話に耳を傾け、「審判の日」を回避しようと立ち上がる。つまり、未来は変えられるという人間性(自由意志)を懸けた戦いに臨むのだ。


 『エイリアン2』は母性の戦い、『T2』は人間性の獲得。この違いが、同じ強い女性を押し出しながらも独自性を持って迎えられている理由なのではないだろうか。『T2』ではさらに、T-800という存在もこのテーマにひと役買っている。その顕著な例が、最後の溶鉱炉に沈むシーンだ。感情を持たないターミネーターという存在が、ジョンとの交流のなかで心の痛みを知り、自己犠牲として自らをターミネートしていく。まさに人間以外のものが人間性を獲得していくのである。



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