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まさかのトリロジーとなって日本再上陸する幻の傑作『ヘンリー・フール』巧みな語り口の肝となったハル・ハートリー流の“見せない”技術とは?

(C)Possible Films, LLC.

まさかのトリロジーとなって日本再上陸する幻の傑作『ヘンリー・フール』巧みな語り口の肝となったハル・ハートリー流の“見せない”技術とは?

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そして、物語はまさかのトリロジーへ



 第1作目において詩の内容を見せず、ブラックボックスのままで提示したからこそ、本作のミステリアスな部分はそのままフレッシュな状態で維持された。それゆえ9年後の続編、さらに8年後の3作目でも、時代の流れによって風化することなくマクガフィンを「美味しく召し上がれる状態」に保ち続けることができたのだ。


 そして「詩」や「告白」の内容は一向に変わらないのに対し、太陽の周囲を惑星のように巡り続けるメインキャストたちは、2作目、3作目とそれぞれの経過年数に合わせて成長、あるいは老いという名の変化を遂げているのも生々しくて面白い。ちょうどリチャード・リンクレイターの『ビフォア・サンライズ』シリーズ3部作や『6才のボクが、大人になるまで。』にも通じるリアリティがここには刻印されている。



『ヘンリー・フール・トリロジー』(C)Possible Films, LLC.


 とにもかくにも、筆者にとって公開以来20年ぶりとなる『ヘンリー・フール』再訪だったが、改めて触れてみてやはりこれが時代を超えて受け継がれるべき傑作だったことが確信できた。そして、続編世界をひと通り鑑賞した上で再度この第1作に舞い戻ることで、世界観の広がりやディテールに込められたハートリーの企みを、より深く味わうことも可能となる。些細なセリフが後のここに繋がっていたのかと思い知る時、全身を衝撃が駆け巡った。


 未見の方、そしてすでに20年前に鑑賞済みの方も、是非この作品『ヘンリー・フール』を現代の感覚で紐解いてみてほしい。きっと少なからず琴線に触れる何かがあるはず。そして気に入ったら、次なる続編へと冒険の歩みを進めてみてほしい。9年後、17年後のサイモンやヘンリーはどうしているのか。時代はどう変わっているのか。芸術の価値、生きる意味とは何なのか。きっとあらゆる意味で、予想を上回る驚きの展開が待っているはずだ。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。 



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作品情報を見る


「ヘンリー・フール・トリロジー」

5月26日(土)アップリンク渋谷にて二週間限定上映

※同特集にて『トラスト・ミー』(1990)も特別上映

配給:Possible Films

公式サイト: http://halhartley.com

(C)Possible Films, LLC.


※2018年5月記事掲載時の情報です。

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