1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ベイビー・ドライバー
  4. 『ベイビー・ドライバー』「音楽」×「アクション」で激走する快作に刻まれた、伝説的カーアクション映画への熱きリスペクト
『ベイビー・ドライバー』「音楽」×「アクション」で激走する快作に刻まれた、伝説的カーアクション映画への熱きリスペクト

『ベイビー・ドライバー』「音楽」×「アクション」で激走する快作に刻まれた、伝説的カーアクション映画への熱きリスペクト

PAGES


エドガー・ライト監督に影響を与えた『ザ・ドライバー』



 興味深いのは、本作に影響を与えた映画として、ライト監督自身が『ザ・ドライバー』(78)を挙げているところだ。もちろん、現時点でもファンの間で崇拝される伝説的な映画ではあるものの、恐らく多くの人は今回の『ベイビー・ドライバー』経由で初めて(あるいは改めて)本作に触れてみたいと思うのではないか。


 手がけたのはアクション映画の雄、ウォルター・ヒル監督。様々な超大作が生まれ、内容も表現もやや過剰になりがちだった当時、ウォルター・ヒルはこの映画においてあえて「削ぐ」ことに美学を見出した。余計な要素は一切なし。純度100パーセントのこのカーアクションには、『サムライ』(67)のフレンチ・ノワール要素も加味され、この時代においてやや特殊な輝きを放つ作品に仕上がった。正直言って、公開当時はそれほど高い評価は得られなかったらしい。だが、ウォルター・ヒルのこの作品は次第に熱狂的なファンを獲得し、今やカーアクションの傑作として認知される存在となった。


 『ベイビー・ドライバー』との共通点としてまず真っ先に挙げられるのが、冒頭の「セリフなし」の鮮やかなカーチェイスだろう。今まさに犯行を終えたばかりの強盗団を後部座席に乗せ、一台の車が夜闇を切り裂いて警察の追跡から逃れていく。セリフのない中でエンジンとブレーキ音のみに彩られる映像から、登場人物の性格や役割、人間性が端的に伝わってくるのも面白い。さすがは削ぎ落としの美学だ。


 さらにこの映画では“役柄の名前”まで削がれ、主人公は「The Driver」、ヒロインは「The Player」、追う刑事は「The Detective」として、役回りがそのまま役名になってエンドクレジットで表記される。その点、『ベイビー・ドライバー』でも主人公は「Baby」、ケヴィン・スペイシー演じる犯罪集団のボスは「Doc」、ジェイミー・フォックス演じる危なっかしい男が「Bats」などと全てがニックネーム化、象徴化されているあたりも両作の共通点と言えるのかもしれない。


 また、カーアクションのテイストにも共通点は多い。双方とも特殊効果は極力使用せず、過度な演出、無理のある展開に突っ走ることもしない。あくまでスタントマンを駆使した生身のアクションを追究した結果、決して絵空事ではない“実態のあるシーン”に仕上がっている。


 ここで特殊効果がふんだんに加味されると後から見直した時に技術的な古さが際立ってしまうのが世の常だが、おそらく予算がそれほどなかったはずの『ザ・ドライバー』は、そうした選択肢を切り捨ててリアルな描写に徹している。この映画が一向に古びない理由はそこにある。


 同様にこの映画に魅せられ、影響を受けた作品としてはニコラス・ウィンディング・レフン監督作『ドライヴ』(11)も挙げられる。同じ遺伝子を受け継ぎながら、レフンの『ドライヴ』とライトの『ベイビー・ドライバー』という全く趣を異にする二作品が生まれてくるのも非常に面白いところ。それもこれも『ザ・ドライバー』が極めてシンプル(それゆえ強靭な)な構造を持っているため、後進たちはその基本軸を踏襲しながらも、そこに自分なりの才気を余すところなく爆発させて、独自の走りっぷりへと発展、進化させることが可能となるのだ。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ベイビー・ドライバー
  4. 『ベイビー・ドライバー』「音楽」×「アクション」で激走する快作に刻まれた、伝説的カーアクション映画への熱きリスペクト