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アクション映画の巨匠ジョン・マクティアナン。『プレデター』を名作たらしめた悪夢のような現場とは

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

アクション映画の巨匠ジョン・マクティアナン。『プレデター』を名作たらしめた悪夢のような現場とは

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シュワルツェネッガーまで体重激減!



 このような試行錯誤を繰り返すなか、撮影は思ったように進まず、出演者やスタッフの疲労は極限にまで達した。マクティアナンは体重が10キロ以上減り、製作者の一人などは病気で20キロ近くも減ってしまったという。主演のシュワルツェネッガーも大きく体重を減らした。地元のレストランの食事で、ひどい下痢をおこし脱水症状に陥った彼は、その後、地元の食べ物を極力食べないようにしたのだ。映画を観ると、後半のシーンでシュワルツェネッガーの頬がこけているのはそのためだ。


 しかし、こうした経験は思わぬ効果を生んだ。苦難を乗り越えながらの撮影で現場には連帯感が生まれ、不思議と辛いという気持ちはなかったという。その証が『プレデター』のエンドロールに表れている。



『プレデター』(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


エンドロールに込めたマクティアナンの思い



 『プレデター』のエンドロールでは1950年代の映画のように、メインキャストが一人一人映し出されて紹介される。マクティアナンは『 特攻大作戦』(67/監督:ロバート・アルドリッチ)のように主要キャストを再びラストで登場させたかったという。それは撮影の合間のオフショットのような風情で、キャストたちは満面の笑みを観客に見せる。ホラー映画のエンドロールとしては、かなり変わっているが、この演出には監督のある思いが込められていた。


 「現場の楽しい雰囲気を伝えたかったんだ。素晴らしい撮影だったからね。観客にも楽しんで欲しいと思ったんだ。 前半と後半でトーンがちがうが、私は後半が好きだ。前半は映画会社が納得するように作った。後半で自分がやりたいことをさく裂させたんだ!」その言葉の通り、ラストの大爆発はマクティアナンが過去に見た夢をもとにしているという。


 新人監督で権限の小さかったマクティアナンは自らの知恵と工夫で荒唐無稽なSFホラーを見事に実現させ、さらに映画会社のいいなりにならず、自らのビジョンを作品に叩きつけた。製作から31年を経た『プレデター』がいまだ伝説的作品として語りつがれ、ファンを増やし続けているのは、職人マクティアナンの妄執の熱を観客が感じ取るからだろう。


 4年前に刑務所を出所したマクティアナン。現在、67歳の彼が新作の準備を進めているかどうかは定かではないが、その熱き職人魂をスクリーンで見られる日が再び来ると信じて、待ち続けたい。


参考)

『プレデター』ブルーレイ、ジョン・マクティアナン監督による音声解説




文: 稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。



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