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『シング・ストリート 未来へのうた』のジョン・カーニー監督が傑作『ザ・コミットメンツ』を意識した理由

© 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved

『シング・ストリート 未来へのうた』のジョン・カーニー監督が傑作『ザ・コミットメンツ』を意識した理由

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アイルランドの音楽映画をつなぐ人脈



 カーニーが『ザ・コミットメンツ』を意識した大きな理由がもう1つある。それは、カーニーが1990年の結成時から1993年までベースおよびPV制作担当として参加したロックバンド、The Framesのフロントマンであるグレン・ハンサードが、コミットメンツのギタリスト=アウトスパン役に起用されたことだ。バンド結成から1年後の1991年に映画が公開され、音楽家としてよりも先に俳優として国内外で注目されたハンサードだが、彼はその後のインタビューでたびたび、この映画初出演を後悔したと口にしている。The Framesで成功を収める前に、「コミットメンツのアウトスパン」として世間に認知されてしまったからだ。そんなハンサードの苦悩を、バンド仲間のカーニーは間近で感じていたに違いない。



『シング・ストリート 未来へのうた』© 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved


 The Framesを離れ、映画監督になったカーニーは、4作目にして初の単独オリジナル脚本となる『ONCE』の企画で、盟友ハンサードに声をかける。当初ハンサードは楽曲提供のみの参加で、製作を兼ねるキリアン・マーフィーが主演する予定だった。しかしマーフィーの出演辞退を受け、監督はハンサードに主役を演じるよう依頼。『ザ・コミットメンツ』以降、演技から離れていたハンサードだったが、迷った末にこれを引き受ける。結果、ハンサードと、彼がザ・スウェル・シーズン名義でデュオを組んでいた相手のマルケタ・イルグロヴァによる「本物の歌と演奏」が作品の大きな魅力となり、映画とサウンドトラックが各国でヒットを記録。劇中で楽器店を訪れた2人が初めてデュエットする曲『Falling Slowly』は、2008年のアカデミー賞歌曲賞を受賞した。


 『ザ・コミットメンツ』の出演者で、カーニーの映画にも登場する人物がもう1人いる。コミットメンツの女性コーラス3人組のうち、しっとりとしたソロ歌唱も披露するブルネットの美女ナタリーを演じたマリア・ドイル・ケネディだ。彼女は『シング・ストリート』で、主人公コナーの母親に扮している。かつてソウルバンドで歌っていた女性が結婚して3人の子供を産み、末息子がまた音楽での成功を夢見ている――と妄想を膨らませるのも楽しい。


 『シング・ストリート』の音楽にはハンサードも貢献。マルーン5のアダム・レヴィーン(カーニーの音楽映画第2弾『はじまりのうた』で映画初出演を果たした)が歌うエンディング曲『Go Now』を、レヴィーン、カーニーと共作している。


アダム・レヴィーン『Go Now』




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