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『ザ・コミットメンツ』バンド映画最大の魅力「ホロ苦さ」を体現した出演者たち

© Photofest / Getty Images

『ザ・コミットメンツ』バンド映画最大の魅力「ホロ苦さ」を体現した出演者たち

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劇的な復活をとげた者、亡くなった者。キャストのその後



 では、『ザ・コミットメンツ』に出演したキャストたちは、その後、どうしているのか? こちらもさまざまな運命をたどっている。


 まず映画の後、すぐにミュージシャンとしての道を切り開いたのが、デコ役のアンドリュー・ストロングと、ジミー役のロバート・アーキンズだった。ストロングは何枚ものアルバムを出し、ローリング・ストーンズやエルトン・ジョンのツアーにも参加するなど、ミュージシャンとしてのキャリアを順調に積み重ねた。アーキンズは今作の直後にアメリカで自作をレコーディングするチャンスに恵まれ、作曲やプロデューサー業もこなしたが、現在は地道に俳優業を続けている。


 映画界で最も鮮やかな復活をとげたのは、ギターでバンド創設メンバーのアウトスパンを演じたグレン・ハンサードだろう。バンド「The Flames」で活動しながら、2007年に出演した映画『ONCE ダブリンの街角で』が日本を含め、世界中でヒット。『ONCE ダブリンの街角で』は舞台ミュージカル化されるほど愛される作品となった(ちなみに『ザ・コミットメンツ』も舞台ミュージカル化され、ロンドンで上演が続いた)。ハンサードは映画のサウンドトラックにも参加し、『親愛なるきみへ』(2010)、『シング・ストリート 未来へのうた』(2016)など数多くの作品に曲を提供している。


 俳優のキャリアを地道に続けているのが、コーラスを務めた女性3人。ジミーが想いを寄せるナタリー役のマリア・ドイルは『シング・ストリート未来へのうた』に主人公の母親役で出演。「デクスター 警察官は殺人鬼」「オーファン・ブラック 暴走遺伝子」などアメリカのTVシリーズでも重要な役を演じている。バーニー役のブロナー・ギャラガーも『パルプ・フィクション』(1994)や『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)、『シャーロック・ホームズ』(2009)といった話題作に出演。大きな役ではないが、個性的な顔立ちは『ザ・コミットメンツ』と変わっていないので、すぐに認識できる。イメルダ役のアンジェリン・ボールも2017年だけで3本のTVシリーズにレギュラー出演するなど活躍中。



『ザ・コミットメンツ』© Photofest / Getty Images


 一方、『ザ・コミットメンツ』以降、俳優業とは無縁のメンバーもいて、劇中でバンド解散後、医者になったピアノのスティーヴン役、マイケル・エイハーンはエンジニアとして生計を立てているようだ。ドラムのビリーを演じたディック・マッシーは、今作の後のキャリアは、まったくわかっていない。


 そして劇中でも、その後「どこにいるのかわからない」と説明された最年長のジョーイを演じたジョニー・マーフィは、2016年、72歳で天国へと旅立った。


 『ザ・コミットメンツ』の彼らキャストは、映画の人気によって何度かバンドを結成してツアーを回っている。公開から27年が経ち、そうしたバンド再結成も過去のものとなったが、それぞれの歩んだ道を重ねながら、もう一度映画を観れば、バンド映画の最大の魅力である「ホロ苦さ」は格別なものとなって胸を締めつけるはずだ。



参考文献:『ザ・コミットメンツ』劇場プログラム プロダクション・ノート



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO!シアター」では最新公開作品を紹介。 



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