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『デス・レース2000年』これぞロジャー・コーマン式映画術!低予算ながら驚くべき破壊力を持った、70年代の超人気カルト作

(C) 1975 New World Productions Inc. All Rights Reserved.

『デス・レース2000年』これぞロジャー・コーマン式映画術!低予算ながら驚くべき破壊力を持った、70年代の超人気カルト作

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思わぬ名作に刻まれたロジャー・コーマンの姿



 コーマン組が輩出した映画人は、フランシス・フォード・コッポラ、デニス・ホッパー、マーティン・スコセッシ、ジャック・ニコルソン、ジョナサン・デミ、ロン・ハワード、モンテ・ヘルマン、ニコラス・ローグ、ジョー・ダンテ、ジョン・セイルズ、ジェームズ・キャメロンなど枚挙にいとまがない。そして面白いのは、後年になって有名監督へと成長した彼らがロジャー・コーマンを自らの撮影現場へと招き、出演者としてカメラの前に立たせるケースがいくつか見られることだ。


 なるほどロジャー・コーマンは顔立ちもよく、演技の訓練は受けていなくても映画製作について熟知している。コーマン自身も大作映画に顔を出せるのだから悪い気はしなかったろうし、正式なオファーなのでギャラだって受け取ることができただろう。


 こうしてコーマンは『ゴッド・ファーザーPART2』と『羊たちの沈黙』という2本のオスカー受賞作を始め、『アポロ13』や『スクリーム3』にもまんまと顔を出している。これを卒業生からコーマンへ、彼らなりの感謝と敬意の表れと見ることもできる。


 例えば、74年に製作された『ゴッド・ファーザーPART2』ではマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ演じる)逮捕を決定する上院委員会のメンバーの一人としてセリフ付きで登場する。


 コッポラはこの委員会の面々をキャスティングするにあたって、あえて演技のプロではない人を起用したかったという。その流れで付き合いのある脚本家やプロデューサー、映画監督に白羽の矢が立った。中でも師匠格のコーマンに真っ先にオファーが及んだのは言うまでもない。


 撮影時には、隣のスタジオで仕事をしていた同じくコーマン・スクールの卒業生、ジャック・ニコルソンが冷やかしにやってきて、「くれぐれもトチらないようにね!ハリウッドでのあなたの将来がかかってるんだから!」と笑いながら声をかけたようだ。なんと微笑ましい光景だろう。きっと『ゴッド・ファーザー』以外にも、カメオ出演の一作一作、一瞬一瞬に、師弟の絆が見え隠れする。機会があればこれらの作品群もぜひチェックしていただきたいところだ。


 ロジャー・コーマンは今年で91歳。’17年も「デス・レース2050」や「コブラゲイター」などのプロデュース作が並び、今なお変わらぬ精力的な活動のほどがうかがえる。これからも彼の存在は「王」の名にふさわしい賞賛と敬愛のもとで語り継がれていくことだろう。



参考文献:「私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか」(石川三登志、菅野彰子訳/早川書房)




文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。 




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