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『恐怖の報酬』天才ウィリアム・フリードキン最高にして悲運の傑作

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『恐怖の報酬』天才ウィリアム・フリードキン最高にして悲運の傑作

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※2018年12月記事掲載時の情報です。


『恐怖の報酬』あらすじ

南米奥地の油井で大火災が発生。祖国を追われ、その地に流れてきた4人の犯罪者は、ひとり1万ドルという「報酬」と引き換えに、わずかな衝撃でも大爆発を起こす消火用ニトログリセリン運搬を引き受ける。2台のトラックに分乗した男たちは、火災現場まで道なき道を300キロ、ジャングルの奥へと進んでいくが、その先に待ち受ける彼らの運命とは―。


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オリジナルと比較され、得られなかった正当な評価



 筆者が高校生の頃(90年代初頭)、なぜか唐突にVHSで『恐怖の報酬』(77)がリリース、それをレンタルビデオ店で手に入れ夢中で見た。衝撃を与えればすぐさま爆発するニトログリセリンを、トラックで300キロ先に運ぶ4人の男たちの重厚なドラマに圧倒された。その数か月後、ある映画関係者と話す機会を得て『恐怖の報酬』にいたく感動したことを伝えると、彼はこう言い放った。「やっぱりクルーゾーのオリジナル版にはかなわないよ」。


 まだ映画歴の浅かった筆者はその時初めて、ウィリアム・フリードキン監督の『恐怖の報酬』が、フランスの巨匠、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの『恐怖の報酬』(53)のリメイクであることを知った。その後、オリジナルを見たが(全編ちゃんと見たか記憶は定かでないが…)私は今も断然フリードキン版を偏愛している。しかし、同作は世間のオリジナルに重きを置く風潮と、公開時の不幸が重なり、長く不当な評価に甘んじて来た。



『恐怖の報酬』Copyright © MCMLXXVII by FILM PROPERTIES INTERNATIONAL N.V. All rights reserved.


 1977年の初公開当時、世界は『スター・ウォーズ』(77)ブームに沸き立っており、南米を舞台に汗と血と泥にまみれた男しか出てこない『恐怖の報酬』は、興業的に大惨敗を喫した。そのため同作を海外で上映する際に、配給会社はフリードキンに無断で再編集を行い、121分の北米公開版を92分にまで縮めてしまう。そのためか、ここ日本での興行成績も1.1億円とまったくふるわなかった。批評家の多くもクルーゾーのオリジナルと比較して批判するものが多く、作品はソフト化と絶版を繰り返し、日本でも長く完全版を見ることは叶わなかった・・・。 


 その状況が覆されたのは2012年。複雑な権利関係が災いし長く封印されていた同作を蘇らせるべく、フリードキンは訴訟を起こし、ワーナーにレストアの費用を出すことをOKさせた。そして4Kデジタルリマスターでオリジナル完全版を製作、2013年のヴェネチア国際映画祭でのプレミア上映を皮切りにLA、ロンドン、カンヌでも上映、世界に『恐怖の報酬』熱を拡散させた。そして初公開から40年を経た今年、遂に日本のスクリーンにフリードキン版『恐怖の報酬』は蘇った(配給交渉にあたったというキングレコードの関係者には感謝の念を幾重にも表したい!)。映画ファンは、この作品をスクリーンで見られる至福に、今こそ思う存分ひたるべきだ。


『恐怖の報酬』予告





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