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新鮮さと老練さを併せ持つ『ヘレディタリー/継承』の計算された作品構造とは

© 2018 Hereditary Film Productions, LLC

新鮮さと老練さを併せ持つ『ヘレディタリー/継承』の計算された作品構造とは

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『ヘレディタリー/継承』あらすじ

グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは夫・スティーブン、高校生の息子・ピーター、そして人付き合いが苦手な娘・チャーリーと共に家族を亡くした哀しみを乗り越えようとする。自分たちがエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかぬまま・・・。やがて奇妙な出来事がグラハム家に頻発。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がする、暗闇に誰かの気配がする・・・。祖母に溺愛されていたチャーリーは、彼女が遺した“何か”を感じているのか、不気味な表情で虚空を見つめ、次第に異常な行動を取り始める。まるで狂ったかのように・・・。そして最悪な出来事が起こり、一家は修復不能なまでに崩壊。そして想像を絶する恐怖が一家を襲う。“受け継いだら死ぬ” 祖母が家族に遺したものは一体何なのか?


Index


圧倒的完成度と恐怖はどこから生まれたのか



 「ホラー」というジャンルは、観客を震え上がらせる以外に、映画界での成功を目指すクリエイターの登竜門としての役割も担ってきた。比較的低予算で制作できるという事情ももちろん、全てを端正に仕上げることができなくとも、瞬間的な部分で光る才能を見せつけることができるからだ。


 しかし、このほど長編を初めて撮りあげたアリ・アスター監督は、そのような瞬発力を発揮しながらも、同時に老練と感じられるような手つきで、圧倒的な完成度のホラー映画を完成させてしまった。それが本作『ヘレディタリー/継承』である。



『ヘレディタリー/継承』© 2018 Hereditary Film Productions, LLC


 このホラーは、突然大きな音を出して観客をびっくりさせるような演出をとっていないにも関わらず、しっかりと恐怖を醸成させることに成功し、さらには名状し難い複雑で不可解な感情を観客に与えることで、映画作品としての深みを獲得している。そんな恐怖や感情は、いったいどこから生み出されるのだろうか。ここでは、その謎を明らかにしていきたい。



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