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『ウトヤ島、7月22日』72分、衝撃のワンカット撮影がもたらしたもの

Copyright (c) 2018 Paradox  

『ウトヤ島、7月22日』72分、衝撃のワンカット撮影がもたらしたもの

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『ウトヤ島、7月22日』あらすじ

政治に関心ある数百人の若者が集い、キャンプファイヤーやサッカーに興じながら政治を学び、国の未来について語り合っているウトヤ島。そんなこの世の楽園のような場所を突如として銃声が切り裂き、キャンプ参加者の夢と希望を一瞬にして打ち砕く。何が起こっているのかわからないまま仲間たちと森へ逃げ込んだ少女カヤは、その恐怖のまっただ中でありったけの勇気を奮い起こし、離ればなれになった妹エミリアを捜し始めるのだが……。


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ノルウェーで起こった史上最悪の惨劇



 2011年、7月22日。この日、ノルウェーで勃発したテロ事件のニュースが世界中を駆け巡った。事件のあらましはこうだ。まず、午後3時17分、オスロにある政府庁舎前にて爆破テロが巻き起こり、8名の人々が犠牲となる。さらに午後5時過ぎ、今度はオスロから40キロほど離れたウトヤ島にて無差別乱射事件が発生。サマーキャンプに参加中だったノルウェー労働党青年部の若者たち69名が殺害された。いずれも一人の極右思想の持ち主の手によるもので、計77名の尊い命が犠牲になったこの事件は、単独犯の犯行としては史上最悪のものと言われる。


 映画『ウトヤ島、7月22日』は、この惨劇に焦点を当て、あの日、あの場所で何が起こったのかを、一人の少女の視点で描き出した作品だ。



『ウトヤ島、7月22日』Copyright (c) 2018 Paradox 


 思い起こすと、実際に起こったショッキングなテロ事件を映画化する例としては、2001年の9・11テロを、ポール・グリーングラス監督が独自の取材に基づき描いた『ユナイテッド93』(06)、また同年にオリバー・ストーン監督が発表した『ワールド・トレード・センター』などが浮かんでくる。また近年は、ボストンマラソンでの爆破テロ事件を描いた『パトリオット・デイ』(16)なども記憶に新しい。


 これらの事件はまだ記憶が生々しく、犠牲者の遺族たちや、事件によって外的、心的な負傷を被った人々にとっては極めてセンシティヴな内容を含むため、題材へのアプローチ方法や、いかに映画として描くかという部分で強く「作家性」が立ち現われる傾向が強い。先に挙げた『ユナイテッド93』と『ワールド・トレード・センター』も、描く対象が違うので当然とはいえ、題材との距離感、描写タッチ、作品としてのまとめ方といった面で、作家性による大きな差が出ていたのが印象的だった。



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