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『ゴッドファーザーPARTII』莫大な権力を手にしたマイケル・コルレオーネと重なる、フランシス・フォード・コッポラ

Copyright (C) 1974 by Paramount Pictures and The Coppola Company. All Rights Reserved. Restoration Copyright (C) 2007 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ゴッドファーザーPARTII』莫大な権力を手にしたマイケル・コルレオーネと重なる、フランシス・フォード・コッポラ

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マイケル同様、莫大な自由と権力を手にしたコッポラ



 そもそもコッポラは『ゴッドファーザー』の続編に乗り気でなかった。DVDやBlu-ray収録のコメンタリーによると、パラマウントの製作責任者だったロバート・エヴァンスらプロデューサー陣との関係はすっかりこじれていて、一緒に仕事するのは懲り懲りだった(その後エヴァンスとは『コットンクラブ』(84)で再度組み、最悪の形で決裂した)。コッポラはプロデューサーに回りたいと言い出し、代わりにマーティン・スコセッシを推薦したというから、それはそれで興味深い続編が生まれていたかも知れない。


 しかしエヴァンスらパラマウントの首脳陣は、前作の格調高さを受け継ぐ続編を任せられるのはコッポラしかいないと確信していた。辛抱強く説得を続けた結果、コッポラが監督とプロデューサーを兼ね、全面的な決定権と事実上上限のない予算、そして莫大な報酬を受け取ることで合意に至る。パラマウントから前代未聞の譲歩を引き出すほどに、『ゴッドファーザー』は大成功を収めていたのである。


 コッポラはそれまでにパラマウントが企画開発していた脚本(中にはマリオ・プーヅォが参加していたものもあった)をすべてボツにして、以前から温めていた「時代が異なる父と子の二つの物語をリンクさせる」というアイデアを適用することに決めた。原作にあった若き日のヴィトー・コルレオーネを描いた章をまるごと「過去パート」として使い、そして新たにマフィアファミリーのドンとなった息子マイケルのその後を、時間軸を行き来しながら同時進行させようと考えたのだ。



『ゴッドファーザーPARTII』Copyright (C) 1974 by Paramount Pictures and The Coppola Company. All Rights Reserved. Restoration Copyright (C) 2007 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 コッポラの言によると、今回の脚本も原作者プーヅォとの共同名義だが、マイケルが主人公となる「現代パート」(とはいっても時代設定は近過去の1950年代)のストーリーはほぼひとりで考えたという。コッポラとプーヅォが互いに、書いたものに意見を加えたり改稿したりする作業行程は前作と同じだったが、プーヅォの原作をプーヅォ自身が脚色したものがベースになっていた前回と違って、今回は「過去パート」も「現代パート」コッポラの主導でシナリオが作られたのだ。


 とはいえコッポラがワンマンばかりを押し通したわけではない。原作のエッセンスをあちこちに反映させているし、コッポラ自身が、トム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)とフランク・ペンタンジェリ(マイケル・V・ガッツォ)が刑務所で交わす硬質なやり取りなどに、プーヅォならではの貢献を認めている。またマイケルの妻ケイ(ダイアン・キートン)が妊娠中だった子供を失うくだりについては、コッポラの妹でコニー役のタリア・シャイアのアイデアだったという。


 脚本のトラブルといえば、撮影直前になってアル・パチーノが「この脚本なら出演しない」と言い出したことがあった。コッポラは週末をかけて一から書き直し、ようやくパチーノの了承を得たという。コッポラは「もっと真剣に脚本を書けというメッセージだったのだと思う」と語っており、さすがに手にした自由の大きさに、コッポラも多少天狗になっていたのかも知れない。


 また、本来用意していたラストシーンが撮れるかどうかが、撮影当日までわからない事態に困り果てたこともあった。父ヴィトーの誕生日を祝うために兄弟が集う回想シーンなのに、マーロン・ブランドが出演を渋り続けたのだ。さんざん悩んだコッポラは、撮影前日の深夜にヴィトーが姿を現さないアイデアを思いつき、別バージョンの脚本を急遽書き上げて、なんとかブランド抜きで撮影することができた。結果『PARTII』では、マーロン・ブランド演じるヴィトーの姿が一切映らないことで、かえって老ヴィトーの存在感が増す効果が生まれたのだから映画作りとは不思議なものだ。



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