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『アビエイター』伝説の大富豪ハワード・ヒューズ、豪快人生の光と影

(c)Photofest / Getty Images

『アビエイター』伝説の大富豪ハワード・ヒューズ、豪快人生の光と影

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大ヒットしたけど赤字! ハリウッド初期の超大作『地獄の天使』のとんでもない製作秘話



 描かれるのは主に青年期から壮年期へと至る波瀾万丈の約20年間。学生時代のエピソードだったり(ちなみに学校の成績は、得意な数学を除いて中程度だったらしい)、19歳の時に夫婦となった幼なじみの令嬢エラ・ライスとの最初の結婚などは端折られている。ハワード・ヒューズを演じるのは当時29歳のレオナルド・ディカプリオ。スコセッシと組むのは『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)に続き2作目。さらに『ディパーテッド』(06)、『シャッター アイランド』(10)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)と現在までに計5作に主演。ロバート・デ・ニーロ(2019年秋にNetflixで配信予定の新作『アイリッシュマン』で9作目)に次ぐ、スコセッシの重要なコラボレーターとなっている。


 さて、『アビエイター』の中で颯爽と登場する21歳のハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)は、航空アクション映画『地獄の天使』の製作に着手している。1927年のことだ。すでにヒューズは映画製作者としてルイス・マイルストン監督のコメディ映画『美人国二人行脚』(27)を成功させており、ド素人の若造という前評判を覆す実力を知らしめていたが(翌1928年には同じマイルストン監督の『暴力団』を製作)、大好きな飛行機を題材とする『地獄の天使』に関しては熱量が違った。



『アビエイター』(c)Photofest / Getty Images


 第一次大戦の航空戦を描いたパラマウントの大作『つばさ』(1927年/監督:ウィリアム・ウェルマン)をライバル視し、その出来を超えるべく、本物の戦闘機を買い集め、自ら空中スタントをこなし、ついには監督も自分で務めることにしたのだ。


 ビジネスの枠を破壊して肥大する狂気のロマンと、徹底した完璧主義。『地獄の天使』は初期ハリウッドを代表するエンタメ超大作でありながら、大金持ちのお坊ちゃんが趣味に私財を投じた壮大な「個人映画」とも言えそうだ。規模はどんどん拡大し、撮影期間は予定より延びに延びた。もはや現場は天使のいない「地獄」。この破格の事態を受けて、劇中のニュースはこう伝えている。「137名のパイロット、87機の戦闘機、35人のカメラマン、2,000人のエキストラ。実戦より金のかかる大作はいつ完成するやら」――。


 ようやく撮影に1年半から2年掛け、『地獄の天使』はクランクアップにまで漕ぎ着ける。もちろんサイレント映画として、だ。ところがヒューズは、ワーナー・ブラザースによるトーキー映画の史上第1作『ジャズ・シンガー』(1927年/監督:アラン・クロスランド)を観てしまい、「サイレント映画はもう古い!」と、なんと全資材を抵当に入れて全編音声入りで撮り直しを決めた。


 こうしてトーキー映画として完成した『地獄の天使』は、1930年5月27日、ハリウッド大通りのグローマンズ・チャイニーズ・シアターでプレミア試写が行われた。24歳になっていたヒューズは、同映画の主演女優ジーン・ハーロウ(グウェン・ステファニー)と共に会場に現われ、上映後は万雷の拍手喝采を浴びる。


 最終的な製作費は、実に史上初の100万ドル越え。興行的には大ヒットを記録するものの(具体的な興収の数字には諸説あり)、結局は製作費を回収するまでには至らず赤字に終わった。その豪快さも含めて、丸ごと往年のハリウッドを彩る偉大なフィルムメイキングの伝説である。



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