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『シャザム!』ジュブナイルな冒険映画の引用と、DC映画の“明るい”未来!

(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

『シャザム!』ジュブナイルな冒険映画の引用と、DC映画の“明るい”未来!

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スクリーンに漂う“80年代”の芳香と、冒険映画への賛美



 この映画は、間違いなく80年代の作品からインスピレーションを得ている。舞台は現代のアメリカを描いているが、スクリーンに映るそのすべてが80年代の芳香を漂わせているのだ。近年、映画界では80年代をトレンドとする回帰的な作品が増えている。スティーブン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(18)では、80年代のポップカルチャーを最大限に引用したり、『バンブルビー』(18)は80年代を舞台に、当時のヒット・ナンバーを物語に溶け込ませたりしている。そして両作のストーリーは80年代を代表する青春映画『ブレックファスト・クラブ』(85)の引用である点は言うまでもないだろう。


『レディ・プレイヤー1』予告


 さて、本作のストーリーにも『ブレックファスト・クラブ』の影響を感じずにはいられない。主人公のビリー・バットソンは3歳のとき、母親と生き別れになったことで孤児となる。孤児を保護する制度の中で、里親宅から次の里親宅を転々とする日々。母親を探して家出を繰り返しているのだ。そんな中、ビリーは、心優しいバスケス家の養子として新しい環境に身を置くこととなる。バスケス家の子どもたちは全員が養子。血のつながりはなく、性格はみんなバラバラだ。まったく違うアイデンティティを持つ、個性に富んだ子どもたちが悪に立ち向かう姿を見ると、『グーニーズ』(85)や『E.T.』(82)などに見る青春の刹那を感じることだろう。


 近年の作品でいうと、J・J・エイブラムス監督の『スーパーエイト』(11)や、Netflixオリジナルドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(16-)を彷彿とするが、これらの作品だって元をたどれば『グーニーズ』や『E.T.』に行き着くこととなる。『アクアマン』が“海洋のスター・ウォーズ”と言えるアクション全開のオーラだったのに対し、『シャザム!』ではジュブナイルな冒険映画からの引用を映画全体から感じ取れるハズだ。



『シャザム!』(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.


 ビリー少年が謎の魔術師に遭遇し、言われるがまま「シャザム」と呪文を唱えると、見た目はオトナ、中身はコドモなスーパーヒーローに変身する。子どもが大人に変身する作品として、本作に多大なる影響を与えたのがトム・ハンクス主演の『ビッグ』(88)ではないだろうか。同作は、ジョシュ少年が、願いを叶えるという不思議なコインゲーム“ゾルダー”を見つけるところから始まる。「大きくなりたい」と願うと少年は、翌朝、30歳前後の大人となって目覚めるのだった。


 作中、シャザムとなった少年ビリーがフロアピアノの上で戦う場面だが、『ビッグ』に同じようなシーケンスが見られることから、同作のオマージュであることはまず言うまでもないだろう。『ビッグ』の痛快なコメディと、琴線に触れるストーリーは、本作『シャザム!』の大部分に根ざしているような気がしてならない。また、血のつながりのないファミリーが力を合わせるという意味では。疑似家族の冒険を描いた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14)を想起させる。クライマックスのバトルも、80年代の雰囲気に終始する作りを意識している。懐かしさを感じさせつつ、DC映画としては新しささえ覚える、まさにハイブリッドな面白さが内包されているのだ。




文: Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



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『シャザム!』

公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/shazam-movie/

(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.


※2019年4月記事掲載時の情報です。

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