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アメリカン・ニューシネマ『卒業』、マイク・ニコルズの演出テクニックを垣間見る

(c) Getty Images

アメリカン・ニューシネマ『卒業』、マイク・ニコルズの演出テクニックを垣間見る

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ニコルズが大爆笑したホフマンのアドリブ



 そんなニコルズが監督第2作に選んだのが『卒業』だ。アメリカの作家、チャールズ・ウェッブの原作を、俳優で脚本家でもあるバック・ヘンリーとカルダー・ウィリンガムが脚色した台本を手にしたニコルズは、まず、俳優たちに台詞を完璧に覚えさせた上で、すべてのシーンで念入りなリハーサルを行った。出演者の1人であるキャサリン・ロスは、地方公演に出かけられるくらい台詞が擦り込まれたと語っている。ニコルズの舞台人ならではの演出スタイルだ。



『卒業』(c) Getty Images


 だが、そのリハーサルが名場面を生む。例えば、ダスティン・ホフマン演じる主人公のベンジャミン(ベン)と、アン・バンクロフト扮するミセス・ロビンソンが初めてホテルで密会するシーン。リハーサルでホフマンは突然、バンクロフトの胸を鷲掴みにして彼女を凍り付かせる。学生時代によくジャケットの上から女子の胸を掴んで遊んでいたことを思い出したからだ。それを見てニコルズが大笑いすると、つられてホフマンも大笑い。笑いが止まらないホフマンは困り果てて、壁に頭を何度も打ち付けて笑い止めようとする。その突飛な行動が密会シーンに可笑しさを書き加え、結果、本番でも彼のアイディアは採用される。



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