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『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』図書館は民主主義の柱。巨匠フレデリック・ワイズマンが贈る

(c)2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』図書館は民主主義の柱。巨匠フレデリック・ワイズマンが贈る

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※2019年5月記事掲載時の情報です。


『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』あらすじ

世界中の図書館員の憧れの的、ニューヨーク有数の観光スポット、世界最大級の知の殿堂。その舞台裏から、この図書館が世界で最も有名である<理由>が見えてくる。



 60年代よりアメリカを中心に、様々な場所で現代社会の一部を切り取り記録してきた、ドキュメンタリー映画の巨匠、フレデリック・ワイズマン監督。今回彼が選んだ題材は、世界有数の図書館として知られる、ニューヨーク公共図書館だ。年間300億円を超える予算で運営され、4つの中央図書館と92の分館からなる、世界最大級の“知の殿堂”である。


 一つの図書館にまつわる内容だけで、本作『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』の上映時間は約3時間25分に及ぶ。だが本作を鑑賞すれば、この作品がなぜここまで長大となったのかが理解できるはずだ。ここではその理由や、本作がワイズマン監督の手法を通して巨大図書館をどのように映し取ったのか、そして、そこから浮かび上がってくるものを考えていきたい。


Index


フレデリック・ワイズマンの眼



 こういった題材に取り組む場合、多くのドキュメンタリー作家は、建築の壮大さや輝かしい歴史、現在や未来における課題を紹介しながら、インタビューを中心に組み立てていくのではないだろうか。だがワイズマン監督はそうではなく、一貫して“そこで何が行われているのか”ということを主眼に置いて、観客のように“見る”ことに集中していく。



『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(c)2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved


 もちろん、いつ、どこで、何を撮るのかという計算は存在する。しかしワイズマン演出では、ほとんどの場面で、ナレーションや音楽でシーンの意味を補強することはない。凝った照明や構図によるドラマチックな雰囲気が映像に施されるわけでもなく、きわめてナチュラルに、その場その場を切り取っていく。だから観客は、その場所に自分も立ち会って、同じ時間を共有しているような気持ちになってくるのだ。ある種の禁欲性が、一つの現実をそこに再現するのである。だから観客は映像を通して、能動的に“意味”を見出していくことになる。


『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』予告


 このような手法は、同世代であったアメリカの映像作家スタン・ブラッケージによる、定点的なカメラによって撮られた実験的なドキュメンタリー作品に、より先鋭化されたかたちで見られていた。音声すらカットされ、カメラが映し出したままのブラッケージの映像を見る観客は、そこから何を受け取ってもよい。本作にも共通する“観客に考えさせる”というアプローチは、消極的なように見えながら、一方では挑発的な性質をも備えているといえる。



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