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鬼才ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』が描く、超過激な向こう側の世界※注!ネタバレ含みます。

(c)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN

鬼才ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』が描く、超過激な向こう側の世界※注!ネタバレ含みます。

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ジャックとダンテ、共通する“赤”のカラー



 ヴァージについて明らかになったところで、もう一度、先の絵画的瞬間に立ち戻ろう。ここで主人公ジャックは真っ赤なローブを身にまとっている。そして奇しくも、ドラクロワの描いた絵画でもダンテは真っ赤な衣装を頭にかぶっている。


 古今東西、ドワクロワ以外が描いた歴史的絵画(例えばボッティチェリなど)でも「ダンテと言えば赤」という共通認識は貫かれており、高貴かつ神への信仰や愛に満ちたこの色は、いわばこの偉人のトレードマークと言えるものだ。


 対する『ハウス・ジャック・ビルト』も赤を印象的に散りばめている。冒頭から山道を走る車のカラーに始まり、タイヤ交換のジャッキ、そこで飛び散る血の色にも鮮烈な赤が受け継がれ、路上には不気味な一本線が浮かび上がり、やがてたすきをつなぐように最終ランナーのユニフォーム(つまりローブ)となり、その足下には真っ赤に煮えたぎるマグマが口を開けて待つ。かくも赤に魅入られた物語。そして人生。



『ハウス・ジャック・ビルト』(c)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN


 偉人ダンテと、シリアルキラーのジャック。この似ても似つかぬ、しかし同じカラーに身を包んだこれらの人物を、どうやらトリアーは恐れ多くも重ね合わせて描いているようである。


 そうやって見ていくと、ジャックが暗闇の中でヴァージと初めて対面する場面も鮮烈だ。究極の材料を用いてこしらえる建築物は、筆者の目には、家というよりはどこかロダンの代表作「地獄の門」(これもまた「神曲」がモチーフ)か、あるいはウィリアム・ブレイクによる「地獄篇」の奇妙な挿絵(集英社文庫で言えばP.31)のようにも思えてならなかった。これをくぐることで彼らは究極的な異世界へと入り込んでいくことになる。



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