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『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2』ロバートゼメキスが「チキン!」に込めた自戒の念とは

(C) 1989 Universal Studios. All Rights Reserved.

『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2』ロバートゼメキスが「チキン!」に込めた自戒の念とは

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ポップカルチャーと2人の“スティーブン”



 未来(2015年)に到着したマーティは息子の犯罪を止めるために「カフェ80'」へ向かう。


 途中にある映画館で上映されているのは『ジョーズ19』。3D映画で監督はマックス・スピルバーグ。これは、スティーブン・スピルバーグ実の息子の本当の名前である。ちなみに、その名前の由来は『マッドマックス』から。


 路肩には『ブレードランナー』のポリス・スピナーが停車しており、アンティーク・ショップには1988年に公開されたばかりの『ロジャーラビット』の色あせたぬいぐるみや、マグナボックス社の家庭用ゲーム機「オデッセイ2」、1984年に発売された初代「Macintosh」には「アンティーク・コンピューター」のPOPが付けられている。



『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2』(C) 1989 Universal Studios. All Rights Reserved.


 「カフェ80'」では、接客をするモニターに映るCGIのマイケル・ジャクソン、レーガン元大統領、ホメイニ師がスクラッチするように吃りながら接客する。これは80年代に大流行した擬似バーチャル・キャラクター「マックス・ヘッドルーム」のパロディである。このように、80年代のポップカルチャーをギュウギュウに詰め込んでいるのだ。


 近年では、タランティーノの一連の作品群や、NETFLIXドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(16~)などを筆頭に、80年代ポップカルチャーを大フィーチャーした作品が作られている。当のスピルバーグも『レディ・プレイヤー1』(18)では、大々的にフィーチャーしていた。


 『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart.2』は、それらの先駆けとも言えるが、当時からすでに人気作家であった“もう一人のスティーブン”。スティーブン・キングの影響は無視できないところであろう。


 モダン・ホラーの旗手として、現在を舞台にした恐怖譚を書き続けているキングは、作中の虚構の世界の中に、実在する商品やコミック/ポップソング/映画などを登場させることで、現実世界と地続きだと錯覚させ、恐怖を身近なものにした。


 『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart.2』では公開当時の「新商品」を「アンティーク」として登場させることで、現実世界の未来をよりリアリティのある身近なものとして提示したのだ。


 ちなみに。80年代のポップカルチャーは50’sカルチャーのリバイバルであったが、2010年代は80年代リバイバル=50’s孫引きリバイバルであったことも記憶に新しいところ。『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart.2』は期せずして、50年代、80年代、2010年代と、蛍光色の明るく楽しい外装の中に不安を隠した時代を描いていたのだ。



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