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『ノッティングヒルの恋人』90年代を代表するロマンティック・コメディ、現在に与える影響

(C) 1999 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ノッティングヒルの恋人』90年代を代表するロマンティック・コメディ、現在に与える影響

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現代のロマンティック・コメディへの影響



 また、注目したいのは、本作が、男性よりも女性の方が社会的な地位が高いカップルを描いていたことである。この枠組みが、実は現代において重要な意味を帯びてきているのではないかという気がする。


 たとえば、アメリカで人気のアジア系コメディアンふたりが製作、脚本、主演を務めたNetflix映画『いつかはマイ・ベイビー』(19)は、セレブリティの女性と平凡な男性のアジア系カップルのロマンスに焦点を当てている。ベトナム&中国系のアメリカ人アリ・ウォンが演じる有名シェフと、韓国系アメリカ人ランドール・パークが演じる実家暮らしの売れないミュージシャンの関係を描いたこの映画の構造は、大ヒットを記録した『クレイジー・リッチ!』(18)と同様に、伝統的でオーソドックスなロマンティック・コメディの形式に、アジア系キャストを落とし込んだものだと言える。


『いつかはマイ・ベイビー』予告


 『いつかはマイ・ベイビー』の監督、イラン系アメリカ人の監督ナーナチカ・カーンは次のように明かしている。「『恋人たちの予感』(89)や『ブリジット・ジョーンズの日記』、そして『ノッティング・ヒルの恋人』といった80~90年代の古典的なロマンティック・コメディのルックを現代のストーリーと組み合わせたいと思った」


 『いつかはマイ・ベイビー』の劇中で、式典のレッドカーペットを歩くアリ・ウォンに、報道陣の間からランドール・パークがサプライズで現れて告白する場面は、明らかに『ノッティングヒルの恋人』のあの告白場面を下敷きにしているだろう。


 あるいは、シャーリーズ・セロンがアメリカの国務長官を演じ、セス・ローゲンが失業中のジャーナリストを演じたロマンティック・コメディ『Long Shot』(19)もまた「政界を舞台にした『ノッティングヒルの恋人』」などと評されている。近年、このように固定化された男女の役割、ステレオタイプのジェンダーロールを逆転させた作品がハリウッドで増えつつある。そんな中、『ノッティングヒルの恋人』が、社会的に成功した裕福な女性と冴えないずぼらな男性の恋愛関係を、ある意味先がけて扱っていたことは興味深い。現代のロマンティック・コメディは、本作から影響を受け、更なる発展・革新を試みて、生まれてきているのではないだろうか。


『Long Shot』予告


 最後に、リチャード・カーティスの脚本最新作は、突如誰もビートルズを知らなくなった世界でただひとり彼らの曲を知る存在となった歌手を描いた『イエスタデイ』。日本公開は10月11日(金)に予定されている。


【参考資料】

『ノッティングヒルの恋人』Blu-ray特典映像 NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン



文: 常川拓也

「i-D Japan」「キネマ旬報」「Nobody」などでインタビューや作品評を執筆。はみ出し者映画を特集する上映イベント「サム・フリークス」にもコラムを寄稿。共著に『ネットフリックス大解剖』(DU BOOKS)。



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作品情報を見る




『ノッティングヒルの恋人』

Blu-ray:1,886円+税/DVD:1,429円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

(C) 1999 Universal Studios. All Rights Reserved.  


※2019年8月記事掲載時の情報です。

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