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難解映画の代表格『マルホランド・ドライブ』が暴くのは、ハリウッドの闇なのか?

(c)Photofest / Getty Images

難解映画の代表格『マルホランド・ドライブ』が暴くのは、ハリウッドの闇なのか?

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ハリウッドの「栄光」と「挫折」



 夜のマルホランド・ドライブを走る一台の乗用車。後部座席には、ブルネットの女性(ローラ・ハリング)。運転席と助手席には、男がそれぞれ座っている。運転手の男は、突然、車を止めた。男は、戸惑う女性に対し、銃を突きつける。次の瞬間、前方から迫る猛スピードの車が女性の車に激突。負傷するも生き延びた女性は、自力でドライブを降り、ハリウッドの街を放浪。映画は、この一連の事故のシーンで幕を上げる。


 この映画には、もうひとりの女性が登場する。スターを夢見る女優の卵で、叔母が大女優ルースだという、ブロンドのベティ(ナオミ・ワッツ)だ。ブルネットの女性は、ルースの家へと迷い込むと、ベティに自らをリタと名乗った。そして真実を打ち明ける。事故による後遺症で、記憶を失ってしまったことを。またリタという名前も、壁に貼られた映画『ギルダ』(46)のポスターを見て、その主演女優リタ(・ヘイワース)の名を借用したものだった。



『マルホランド・ドライブ』(c)Photofest / Getty Images


 このリタ・ヘイワースという女優は、ハリウッドの表と裏を駆け抜けた女優だ。『ギルダ』での成功により一躍トップスターの頂点へと上り詰めた。しかし、男関係のスキャンダルが目立つようになり、人気は下降線をたどりはじまる。スター街道を駆け上がるのも早かったが、下るもの早かった。次第に映画の出演は減り、テレビに転向するも失敗し、晩年にはアルコール依存とアルツハイマーに苦しみ、かつてのスター女優は虚しく死んだ。というより彼女は、ハリウッドという街に殺されたのだ。


 『マルホランド・ドライブ』は、リタ・ヘイワースの栄光の時代と、挫折の時代の双方を描いている。栄光の時代はベティとして、挫折の時代をリタとして、だ。しかしその関係は、映画は中盤以降、真逆の様相を呈してくる。これは夢なのか、現実なのか。すべて夢ならいいのだが、現実はそうはいかない。この映画は、前半を夢、後半を現実として観るのが、映画ファンの定説となっている。しかし、本当にそうだろうか。監督は、明確な答えを用意していない。ストーリーは、観客が自分で構築するのだ。しかしどう結実したとしても、ハリウッドの闇の部分は見え隠れすることだろう。



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