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『オデッセイ』新たなフロンティアをひとりで生き抜く、宇宙服を着たカウボーイの冒険物語

(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『オデッセイ』新たなフロンティアをひとりで生き抜く、宇宙服を着たカウボーイの冒険物語

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西部劇と通じるフロンティア思想



 『オデッセイ』は西部劇の要素を持っている。火星を舞台にした西部劇、という体裁を取った作品なのだ。荒れ果てた土地を開拓し、居住可能(habitable)な場所にしていく作業は西部劇の重要なエッセンスである。たとえば『シェーン』(53)でも、家を建て、畑を耕し、作物を育てるといったシーンは強調されている。西へ移動し、開墾していくプロセス。『オデッセイ』の主人公が火星で生き延びるために、火星の土を使用して芋を栽培するくだりは、これがアメリカ映画であり、西部劇であることを示す重要な場面である。


 主人公は新たなフロンティアへ辿り着き、開拓を試みるアメリカ人なのだ。そう考えてみれば、火星の荒涼とした土地は、いかにも西部劇を連想させる風景であるし、苦心しながら芋の栽培に取り組む場面は、開拓者の苦難に通じるものがある。



『オデッセイ』(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


 17世紀にアメリカへやってきた先人たちはひたすらに西漸運動を進め、荒野へ分け入り開拓していったが、ついに1890年、「もはやアメリカに開拓すべき土地は残っていない」とフロンティアの消滅が宣言された。しかし、未開の土地を目指して移動する行為はアメリカという国のDNAに刻み込まれており、すべての土地を開拓し終えたからといって消えるものではない。かくして宇宙への夢は、アメリカのフロンティア思想が行き着く新たな場所となった。


 『トイ・ストーリー』シリーズ(95〜)に登場するおもちゃが、カウボーイと宇宙レンジャーだった点は象徴的だ。西部劇が時代遅れになり、宇宙への冒険に取って代わる。どちらも、フロンティアを探し求める存在だ。アメリカの土地は開拓され尽くし、フロンティアは消滅したが、まだ宇宙にフロンティアは残っている。米ソの宇宙開発競争には、アメリカ人のフロンティアに対する夢をかきたてた部分が大きかったのではないか。



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