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『オデッセイ』新たなフロンティアをひとりで生き抜く、宇宙服を着たカウボーイの冒険物語

(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『オデッセイ』新たなフロンティアをひとりで生き抜く、宇宙服を着たカウボーイの冒険物語

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理想と綺麗事の復権



 かくして『オデッセイ』は、火星という新たなフロンティアを自分ひとりの力で生き抜く、宇宙服を着たカウボーイの冒険物語として、力強い感動を与えるフィルムとなっている。そして最後に強調したいのは、登場人物たちが持つ高い理想や思いやりの心である。


 NASAや他のクルーが彼を助ける姿勢は美しいが、それは同時に、NASAが今後も火星探査プロジェクトを続けるための広報PR的判断もあると、劇中では語られる。主人公を助けるという決定にも、打算やしがらみがついてまわるのは避けられない。救出にコストがかかる以上、全てが綺麗事だけで済まないことは理解できる。



『オデッセイ』(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


 しかしいまのアメリカに必要なのは、ひとりの人間の命を助けるためにみなが全力を尽くすという理想や、綺麗事の復権ではないか。継続可能な社会を維持し、人びとの尊厳を守るためには、絵空事だと言われようとも、あるべき姿と理想を恥じずに語る必要がある。下品な本音、剥き出しの憎しみや差別が横行するアメリカで(あるいは世界中の国で)、いかに理想と綺麗事を復活させるか。『オデッセイ』が示す輝かしい理想を前に、観客は自然と背筋が伸びるように感じるのだ。




文: 伊藤聡

海外文学批評、映画批評を中心に執筆。cakes、リアルサウンドにて映画評を連載中。著書『生きる技術は名作に学べ』(ソフトバンク新書)。



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20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

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