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『ドリーム』80年代の傑作『ライトスタッフ』と併せてみるべき理由とは!?

(c)2016Twentieth Century Fox

『ドリーム』80年代の傑作『ライトスタッフ』と併せてみるべき理由とは!?

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『ドリーム』あらすじ

東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、オール白人男性である職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。


1961年4月12日、ユーリ・ガガーリンを乗せたソ連のボストーク1号が、史上初めて有人で地球を一周する宇宙飛行を成功させた。ソ連に先を越されたNASAへの猛烈なプレッシャーが高まるなか、劣悪なオフィス環境にじっと耐え、ロケットの打ち上げに欠かせない複雑な計算や解析に取り組んでいたキャサリンは、その類い希な実力をハリソンに認められ、宇宙特別研究本部で中心的な役割を担うようになる。ドロシーは新たに導入されたIBMのコンピュータによるデータ処理の担当に指名された。メアリーも裁判所への誓願が実り、これまで白人専用だった学校で技術者養成プログラムを受けるチャンスを掴む。さらに夫に先立たれ、女手ひとつで3人の子を育ててきたキャサリンは、教会で出会ったジム・ジョンソン中佐(マハーシャラ・アリ)からの誠実なプロポーズを受け入れるのだった。


そして1962年2月20日、宇宙飛行士ジョン・グレンがアメリカ初の地球周回軌道飛行に挑む日がやってきた。ところがその歴史的偉業に全米の注目が集まるなか、打ち上げ直前に想定外のトラブルが発生。コンピュータには任せられないある重大な“計算”を託されたのは、すでに職務を終えて宇宙特別研究本部を離れていたキャサリンだった……。


Index


事実に根ざした宇宙映画『ドリーム』がもたらしたもの



 古今東西、様々なタイプの映画はあるものの、「宇宙映画」というジャンルにはその言葉の響きだけで、すでに壮大なロマンを感じさせる力がある。ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』以降、実に多くの映画作家たちが宇宙を描き続けてきたのも、夜空を見上げるとそこにはいつでも無限のキャンバスが広がっているからだろう。だが、これらの“宇宙”がいわゆるSFの舞台として描かれることはあっても、『ドリーム』のような“事実に根ざした宇宙映画”として描かれるケースは意外と少ないことに気づかされる。


 代表的なところでいっても、83年に公開された宇宙映画の金字塔『ライトスタッフ』や、宇宙飛行士たちが陥った未曾有のトラブルを描く『アポロ13』(1995年)などしか思い当たらない。ロシアに目を向けると、かの人類最初の宇宙飛行士に焦点をあてた劇映画『ガガーリン』、さらにオーストラリアではアポロ11号の月面着陸の際に現地の天文台が大きな役割を果たした逸話を描く『月のひつじ』なる映画も製作された。その他には貴重な記録映像をベースにしたドキュメンタリー映画がほとんどである(一方、TVシリーズでは「フロム・ジ・アース/人類、月に立つ」などの名作ドラマも有名だ)。ただし、今後は『ラ・ラ・ランド』のデミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再びタッグを組む新作”First Man”(2018年公開予定/ニール・アームストロングの人生を描く)など、徐々に“事実に根ざした宇宙映画”への注目度も増していきそうだ。



『ドリーム』(c)2016Twentieth Century Fox


 やや話が逸れたが、本題は『ドリーム』である。60年代のNASAで奮闘する3人のアフリカ系アメリカ人をヒロインに描く本作は、“誰もが知る”マーキュリー計画を、“誰も知らなかった”視点と角度で描き切った点において極めて画期的と言える。人種と性別の壁が行く手を阻んでいたこの時代に、アフリカ系の女性たちの“ヒューマン・コンピューター=計算係”としての尽力が宇宙開発に大きな貢献をもたらしたという事実は、多くの人の心を震わせてやまない。努力と才能と運があれば誰もが壁を突き破って高みを目指すことができるというテーマ自体、まさしく“アメリカン・ドリーム”の根幹を成すものとして受け止めることができるだろう。


 と、この一本だけでも様々な要素に満ちた傑作ヒューマンドラマではあるのは承知の上で、あえてここで一つご提案したいのが、掲題のように「『ライトスタッフ』と併せて観る」という試みである。



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