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『キング・オブ・コメディ』キングと名乗ったコメディアンの、暴走する偏執的な妄想

(c)Photofest / Getty Images

『キング・オブ・コメディ』キングと名乗ったコメディアンの、暴走する偏執的な妄想

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「キング」と「ジョーカー」



 スコセッシは本作について「自尊心の話である」とも言っている。有名になりたいパプキンは、犯罪を犯して人気コメディアンのジェリーの番組に「キング」と名乗り潜り込み、強引に出演する。何千万人もの視聴者にネタを披露し、一躍、有名人になるが、それはコメディアンとしての実力があるわけではなく、ただ有名な人になっただけだ。


 パプキンは自らを「キング」と名乗ったことで、今まで自分をバカにしていた人を見返すことができたと思っている。そして自分に才能があることを認めさせることができたと満足気だ。彼は自尊心を保つことができたのかもしれないが、そのために何をしてきたのかといえば、スターを愛する思いがいつしか憎しみに変わり、暴力となって犯罪を犯しているのだ。



『キング・オブ・コメディ』(c)Photofest / Getty Images


 映画公開後の1983年大晦日、テレビを見ていたスコセッシは「今年最大の失敗作」として『キング・オブ・コメディ』が挙げられたのを見てしまったそうだ。がっかりしたというが、自身もこれほど個人的な作品はもう作れないと当時語っている。ちなみに公開当時のアメリカでは、劇場用ポスターに、デ・ニーロとジェリーがトランプの「ジョーカー」と「キング」としてデザインされている。



参考資料:

キング・オブ・コメディ』DVD特典映像

ニューズウィーク日本版「シネマの20世紀」(1999)



文:伊藤よしこ

映画ライター。シネマトゥデイなどにインタビューやレポートを執筆。趣味は映画祭めぐり。SXSW、モントリオール世界映画祭、トロント国際映画祭、ベルリン国際映画祭など。釜山国際映画祭での取材歴は約10年。



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