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『ビッグ・フィッシュ』と自分自身の物語【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.37】

『ビッグ・フィッシュ』と自分自身の物語【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.37】

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父と息子の物語



 この時期になるとティム・バートン監督作のクリスマスものが恋しくなるけれど、クリスマスがテーマでなくとも温かい作品がある。2003年の『ビッグ・フィッシュ』はダニエル・ウォレスによるベストセラー小説の映画化作品で、昔から作り話ばかり聞かせてきた父親の死期に際し、その実際の人生を知ろうとするお話。


 映画では病床の父エドワードをアルバート・フィニー、彼の話して聞かせる不思議な経験談にうんざりしながらも、その背後に隠れる真実を探ろうとする息子ウィルをビリー・クラダップが演じる。そして、おとぎ話のような回想の中で若き日のエドワードに扮するのがユアン・マクレガーである。現実(現代)パートでは色彩も抑えめで、バートン作品には珍しくなんら変わったことの起きない徹底的な現実世界が描かれるが、対して回想パートは色彩も豊かで幻想的。そんな中でユアン・マクレガーの陽気な笑顔がよく似合う。


 物語は父と息子が不仲になったきっかけから始まる。自分の結婚式でいつも通りの「おもしろい話」を披露してしまった父に、兼ねてからホラ話にうんざりしていたウィルは憤慨し、それから3年の間、エドワードが病に伏せるまで父子は疎遠になってしまうのだ。


 本当の父をなにも知らないウィルは、先の長くないエドワードを前になんとか実際の人生について聞き出そうとする。巨人と一緒に旅に出たこと、不思議な町とその住人たち、狼に変身するサーカス団長、盛大なプロポーズ、東洋での戦争と敵地で出会った美しい双子、セールスマンとしての成功……一体それらにどれくらいの真実が含まれているのか、それらのおとぎ話を取り去ったあとに残る父親の人生とはどんなものなのか。なにより、息子が生まれた日に大きな魚を釣ったという話もホラ話だとすれば、果たして父は自分が生まれた日、どこでなにをしていたのか。自分にも子どもが生まれようとしているウィルは、父親としての自覚のためにもエドワードのことを知りたいという想いを強くするのだった。



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